じっくり身体を労りながら・その2
治癒系統の術式の行為が弱かったことについて。
仮説。
女神の加護の残滓のようなものが強すぎて、治癒の効果で上書きができなかったから。
術式の本質は俺の……もとい、女神の力である“祝福”と大きく離れていないのだろう。
具体的には……えー、特にはなにも。
まだ感覚的な段階。
でもきっと、こういうのって大事だと思うんだよね。
下手に理屈をアレコレ考えるよりも真実に迫ってる……かもしれない。
「しかし、術式の研究というのも危険なんですね。自分は完成したものを使うだけですが……安定に至るまで、やはり色んな努力があったのでしょう」
しみじみと呟く女性。
このケガ、どう言い訳するか考えた結果。
研究中の式陣が崩壊した反動と説明してみた。
最初は魔獣のせいにしようかとも思ったんだけど。
それをすると、国とハンターが大変なことになる。
存在しない危険な魔獣を探してアッチコッチへ。
いらない苦労させちゃうもの。
あとは式陣が暴走したとかも考えた。
けど、一応ね。旅の術師って設定じゃん?
術師が自前の式陣の制御に失敗してたら設定がブレちゃうじゃん。
と、いろいろ考えた結果。
新しく見つけたモノで遊んでたらケガしちゃったテヘペロッ♪ って感じに誤魔化した。
ついでに、ひとりで街から離れた場所にいた言い訳にもなって一石二鳥です。
周囲に迷惑かけないために、ってね!
実際、できるだけ近所迷惑にはならないよう生きていたいとは考えておりますけども。
実行できてるかは別として。
「はい。左足は概ね。右足も順調にキズは塞がっています。この調子なら数日で歩ける……かもしれませんね。体力の低下次第ではリハビリも相応の時間が必要でしょうが、まぁ心配はいらないかと」
体力。
体力かぁ。
どうしようかな?
体の調子が戻るまではムリは禁物。
下手に動けば怪しまれるという意味も含めて、しばらくは大人しくしなければなるまい。
が。
そうなると生活が大変なコトに。
主に金銭。
これが外での生活なら祝福でなんでも揃えることができる。
だけど街中でそれはできめぇよ?
収入源がハッキリしてないのに普通の生活してたらアウトでしょ。
うーむ。
多少の路銀は残っちゃいるが。
「生活費ですか。そう、ですね……旅をしていたのでしたら、いくつか魔導水晶とか、手元に残してるものはありませんか?」
そういやカバンの中にいくつか入れっぱなしだったな。
……主に偽装のために。
大事なモノは祝福空間に収納中。
祝福アクセサリーとか。
そうか。
あの辺りをギルドで換金してもらえれば多少はね?
「その心配はいらん。キサマの持ち込んだ魔導水晶は軍部が色をつけて買い取ってやる。……ふむ、どうやら顔色は悪くないようだな?」




