またまた新たな旅立ちを・その2
まずはナイフ。
祝福~。
そして投てき。
なんか貴族っぽい若いのと、兵士たち。
彼らのだいたい中心だろう場所へ。
サクッと刺さり、そして式陣が展開。
「「―――なにッ!?」」
はい。
手足、氷で封印。
あくまで手足だけ。
凍えて死ぬこたぁないだろうし、窒息したりもしない。
んで。
「き、き、貴様ぁッ!! このような真似をして許されると―――ヒィッ!?」
貴族さまにナイフっぽく整形した氷を突き付ける。
さて。
どうする?
「どう、する、だと?」
そう。
皇帝さんの代わりにとなにやら張り切ってたけどさ。
俺はお前さんたちにとっての敵として認定されたじゃない?
つまり、お前さんがたに配慮する理由はさ、なにひとつ存在しないワケだ。
生かしておく理由なんてないワケじゃん?
「「―――ッ!?」」
声にならない悲鳴ってヤツ。
定番だなぁ。
この人たちの中では皇帝の権力をチラつかせて、それで刃向かうヤツなんていない前提だったんだろう。
『普通はそうじゃろうな。たとえこの国の民でなかろうと、権力者に逆らうは得策に非ず。なら、連中の慢心と批難するのも哀れじゃろうて』
まぁね。
実際、脅迫してはみたものの。
彼らを本当にコロコロしちゃうつもりはない。
そして。
そんな俺の考えなんかお見通しなんだろう。
怯える兵士たちに比べ、野次馬に緊張感はない。
ハンターたちなんか笑いそうだぜ。
いつまでも往来で邪魔するのもアレだ。
終わらせちゃいましょ。
指パッチン!
氷を解除。
そして貴族さんのドタマに拳骨。
なにやら特別な装備品を持ってはいたものの。
ご本人から感じる霊気は一般人レベル。
なので、手加減はムリと判断。
俺の素の能力でも致命傷になりそうなんだもん。
と、いうワケで。
祝福エンチャントで今ごろは夢の中。
どんな夢を見ているかまでは知らない。
別にコイツに恨みはないし、わざわざ悪夢を見せようとは思わなかったし。
飼い主がのびてしまった。
それを見た取り巻きたち、素直に逃げた。
置いていかなかったことは評価しよう。
雇われの義理は果たすようだ。
だけど、仇討ちとまではいかないらしい。
向かってきたらまた凍らせるだけだけどさ。
「坊や。一応聞くがね、これからどうするつもりだい?」
どうするもこうするも。
国のトップと交戦開始したんだもの。
逃げるに決まってるじゃないですか!
「そりゃそうだろうさね。ただ……これだけは言わせておくれ。皇帝は、アンタレウスの坊やは暗愚ではないんだよ。さっきのバカを見た後じゃ説得力がないかもしれないがね」
うん、わかるよ。
下の人間の勝手な行動。
それを全部把握して制御できるか?
ムリでしょ。
その手のゲームですら面倒なのに。
「残念だな。せっかく面白いヤツと会えたってのによ。ほれ、荷物」
いつのまにやらジンガーが荷物を持ってきてくれた。
もともと私物が少ないからね。
見られて困るものはなかったから大丈夫だとは思うけど。
「なぁ。ほとぼりが冷めたらさ、また遊びに来るか?」
どうだろうな?
皇帝とのトラブルだからな。
あの貴族のお坊ちゃんの勝手な行動だとしても、さ。
帝国頂点の言葉ってのは、そんなに無責任なモノではないだろう。
それを殴り飛ばした俺がウロウロしてるのはきっと、よろしくない。
残念だけど、俺とこの国は“敵”になってしまったから。
「仮に坊やがハンター登録するか、あるいは東方領閣下に仕えるなら……いや」
悪いね、気を使ってもらってさ。
前回に比べれば乱闘騒ぎがないぶん穏やかな別れ。
かなり急だけどね。
寮もそうだが、知り合いにひと言くらい挨拶したかったけども。
あんまり親しい姿を見せるのもね?
後でトラブル起きても困るし。
さて。
これからの予定はどうしようかな。
ひとまず身体を労りたいところでもある。
祝福の反動、蓄積し過ぎないうちに。
そしたら……ちょっと鍛えるか。
また幻想種との戦いがないとも限らない。
と、いうか間違いなく起きるだろう。
俺が好奇心を抑えられない限り。
つまり、100パーセント起きます。
だって、ねぇ?
今さら自粛するくらいなら、最初からワガママやってんじゃないよって話。
とはいえ。
いらない波風を立てない工夫と努力はしないとね。
なにがきっかけで誰かを巻き込むかワカランし。
よし。
とりあえず……そうだな。
今回は少し遠くへ足を延ばそうか!




