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のんびりできない幻想追跡・その3

『どれだけ霊気の波長を変えても、魂の輝きは誤魔化せませんよ? 特にお兄さんは不思議な輝きをしていますから』


 魂の輝き。


 さすがは幻想種。


 かなりファンタスティックな判断方法。


 そしてピンチですよ!


 せっかく変装したのになぁ。


 ややこしいことになるの確定。


『ふふ……そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。バラしたりなんてしませんから。わたしも変装に協力しましょうか』


 おや?


 ラービーナの動きが止まった?




「……おや、久しぶりですね。数千年ぶりでしょうか。相変わらず人類の守護者気取りですか? ―――幻想狩りさん」




 はい。


 なんか新しい設定が追加されました。


 幻想狩り。


 強そうだと思った。(小学生並みの感想)


 実際にそういう人たちがいたのかな?


『玉石混交でしたけれど、そういった人たちはたしかにいましたよ? もっとも、わたしが前に封印されたときは奇妙な……あれは、エーテルウェポンのオリジナルとも違う、()()()()()()を使われましたが』


 あ。


『……たぶん、それが女神の秘宝やもしれんなぁ。おっと、ワシの声に返事はするなよ? 声は聞こえずとも不審に思われるやもしれん』


 あい。


 とりあえず幻想狩りキャラで適当に返事をしまして。




 次。


 ハンターと兵士たちに。


 幻想種は俺が相手をするから、民衆の避難を。


「……いいだろう。お前が何者かはともかく、民衆のために動くのはハンターの義務でもあるからな」


「残念だが我ら軍人はそうはいかん。目の前に帝国の脅威があって背を向けるなどありえんからな。そうでなくとも、貴様のような怪しい男の指示になど従えんよ」


 立場の違い、わかりやすい。


 ある程度の自由があるハンターはともかく、軍人については仕方ないだろうね。




「忠実なのですね。いつの時代もアナタのようなナイトは少なからずいましたよ? ただ、年長者としてアドバイスさせていただくならば……その生き方は、きっと長生きはできませんけれど。経験則、です。ふふッ♪」


「ご忠告どうも。しかしもとより国の危機、民の危機に命を燃やす覚悟など完了しているのでな」


「ご立派な志ですね。感動的です。いまこの場においてソレが意味を持つかは別として。いいでしょう、ハンターのみなさんも、軍人のみなさんも、そして幻想狩りもそれぞれの役目を果たすというのなら……わたしも、それを成しましょう。幻想種の名に相応しい振る舞いを」




 場の空気が変わる。


 氷の人形たちが一斉に崩れた。


 ……空気が、重い。


 妖気?


 コイツは凄まじいな。


 呼吸するたびに肺の内側から凍りつきそうだ。




 ラービーナが自分の体を抱き締める。


 あ、これヤバいヤツだ。


 ……いまのうちに攻撃しろよって思うでしょ?


 できないんだな、これが。


 なにが起きるか興味あるから、ではなく。


 舐めプしてるワケでもなく。


 設定のための演出狙いなんかでもなく。




 怖い。


 ただただ怖い。




 なるどねー、これがいわゆる“恐怖で動けない”ってヤツね!


 頭ではわかってるんだよね。


 なんでもいいから行動しなきゃ、と。


 でもむぅーりぃー。


 動こうとした瞬間。


 なんなら視線を外した瞬間。


 それで殺される気がする。




 まぁ、向こうは遊び気分だろうし。


 本当に殺されるようなことはないのかもしれんけど。


 そういう問題じゃないんだろうね。


 遊び半分の妖気でも人間の精神に死を予感させる。


 それだけ俺たちとヤツとでは差があるワケだ。


 ひゅー、パネェ!


 吐きそう。




「ラービーナ・ニウィスが命じる。具現せよ。“クリスタルドール・パレス”」




「――なッ!? 空がッ!?」


「明るい……いえ、薄暗い青……」


「色合いならまるで明け方のようでもありますね。不気味さは桁違いですが」


「そんで? こんどは“アレ”が俺たちの相手ってワケかい?」


「さしずめ、水晶の騎士団といったところかねぇ」




 夜空が薄暗い青に。


 視界は昼間のようにクリアに。


 雑な人型の氷人形たちの代わりに整った騎士の鎧姿が。


 世界が変わった……違うな。


 なるほど。


 帝都の人間全てを喰い尽くすつもりか。


 たぶん、この暗い青空はラービーナの産み出した結界のようなもの。


 それで帝都全てを覆い尽くしたんだな。


 わかるよ。リンクが切れたもん。


 フィンブルムやグローインドに残してた転移門や使い魔。


 魔力で、エーテルリンクで繋がってたのが切断された。


 周囲だけじゃなく、帝都まるごと外の世界と分断するとはねぇ。


 ちょっと強すぎんじゃね?




「帝都が外から切り離された、ね。ちょ~っと信じにくいんだけどさ、それがホントなら逃げるのって厳しいワケ?」


 結界に触れたら助からないかもな。


 試すなら止めないけど。


 異界の狭間に取り込まれても自己責任でね?


「オッケーオッケー。ぜってー触んねーかんね。よし、私はひとっ走りお城いってくるわ。たぶん陛下も避難指示とか出しちゃうだろうし」


「だな。兵士や住民がその異界の狭間とやらにどうにかされる前に止めないとな」


 ハンターたちが四方八方に一目散。


 判断も早いし行動も速い。


 まぁ、外側にいた人たちは手遅れになってそうな気もするけど。


 興味本位で触っちゃったヤツ、いるだろな~。


 そこまではさすがに知らんよ。




 んで。


「ふふ、さすがですね。一目で見抜きましたか。アナタといい、わたしを一度封印したデュランという術師といい、この時代の人間もなかなか楽しませてくれますね?」


 それ、どっちも俺ぇー。


 ってか名前出さないでよ。面倒なことなるじゃん。


『あら、そうですか? 一応気をつかったつもりなんですけど。ほら、あくまで別人扱いということで』


 ア、ハイ。ありがとうございます。


 そんな風に気をつかってくれるなら、もうちょい手加減してくれても……ダメ? ですよねー。




「さて、それではそろそろ……始めましょうか?」




 ラービーナの妖気、さらに強化。


 んー。


 いわゆるさ、主人公と言われる人たち。


 こんな恐怖を常に克服して戦ってたんやろなー。


 尊敬しちゃうね。


 俺なんか変な汗止まんないんですけど。




「人間よ。かつてお前たちが幻想と名付けた我が力、魂に刻むがいい。案ずるな、理解するための時間は我が授けてやろう。―――このラービーナ・ニウィスの氷の世界の中で、悠久の時をッ!!」




 名乗りと同時に放たれた妖気。


 それだけで霊気のガードが削られてんだけど。 


 うーん。


 俺、死んだかな?

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