のんびりできない幻想追跡・その2
人の営みの光。
うーん、でかい!
フィンブルムの王都もなかなかの規模だったけど。
さすがは帝都。ひと味違うぜ。
『女神の力の影響か、あるいは幻想の魔獣の性質か。水晶と化してもヤツは活性化したままじゃった。そして―――』
俺がやった実験。
魔導水晶の式陣の展開。
雪ウルフの式陣からは雪ウルフが出てきた。
なら、ラービーナの魔導水晶からは?
考えたくないが、たぶん。
さて。
まずはどうやって情報収集しようかな~?
地道に歩き回る時間なんてないし~、やっぱ祝福かけた使い魔かしら~?
『はっはっは。現実から目を逸らすのもほどほどにな?』
へーい。
魔導院。間違いなくアレだな。
夜なのに空が赤い場所がある。
澱んだ霊気の流れ。
瓦礫の、たぶん建物が崩れる音。
そして。
数日ぶりの、凶悪な妖気。
……。
…。
うーん、でかいッ!
ラービーナの、えー、たぶん本体の少女部分。
これは前と変わらず。
だが下半身の魔獣部分が超でかい。
周囲の建物、3階建てよりでかい。
そして色々混ざってる。
超☆カオス!
ファンタジー定番モンスター、キマイラっておるやん?
アレのもっと具材特盛な感じ。
あとやっぱり氷のゴリラみたいなのが沢山いるけど……まぁ、そっちは別にいいや。
ハンターだか兵士だか、一応対応できてるし。
やっぱ問題は………。
「ふふっ。みなさん、どうしたんでしょうか? 先ほどまではあんなに賑やかに、とても盛り上がっていたのに。さぁ、もっと。もっと、もっとですよ! 申し訳程度の、玩具程度のエーテルウェポンでも、それだけ数があるのですから! わたしと楽しく踊りましょうッ!」
だよなぁ。
エーテルウェポン持ちのハンターたち。
あと、制服というか、鎧の雰囲気からして騎士っぽい人たち。
こちらもエーテルウェポン使ってる。
が。
苦戦、してますねぇ。
「クソッ……バケモンが……ッ! 魔導院の連中、いったい何を持ち帰ってきやがったんだッ!」
「あーあ。マジシャンたちってば逃げ足はホント速いんだから。ねぇ軍人サン、なにか聞いてたりしないの~?」
「そうであれば、すでに貴様たちにも教えているとも。この状況で勿体ぶるほど自惚れてはおらんよ。まぁ、なんだ……アレが陛下の居城はもちろん、街中へ侵入されたら危険なことくらいはワシにもわかるぞ」
「同感ですね。―――来ますよッ!!」
「ふふッ♪ “乱れ飛ぶ紺碧の牙”ッ!」
両手を上にセクスィーポーズ!
ちょっとボリューム控えめだね! ナニがとは言わないけれどね!
そんなラービーナの背後に現れた大きな式陣。
そこから大量の氷の槍が周囲に降り注ぐ。
さすが、の威力だな。
あと一歩、避けきれなかった人たち。一撃で霊気のガードが破壊されてる。
ショックで意識を失ったみたいだが……まだマシかな?
あれかなりヤバいぞ。
たぶんクラスC程度の能力なら、直撃したらガード壊れるどころか即死レベルだな。
しかし……遊んでるな、完璧に。
ま。遺跡で戦ったときも本気じゃなかっただろうがね。
だからといって様子見するのも危険かな。
なにせ、アイツは人間が死ぬことなんて気にしないだろうし。
遊びは遊びとして、結果的に何人死のうがどうでもいいだろう。
もちろん俺にとってはどうでもよくない。
助けられるなら、見殺しにはできんよ?
祝福ステルス、解除ッ!
さて、まずはラービーナの意識を俺に―――
『あら。お兄さん、わざわざわたしを追いかけてきてくれたんですか? ふふッ♪ 積極的ですね、とても嬉しいですよッ!』
コイツ、直接脳内に……ッ!?
ってか、ばれてーら。
おかしいな~。
ちゃんと霊気も誤魔化してるし、念のため仮面も被ってるのになぁ~。




