のんびりできない幻想追跡・その1
くらーいやみーにドヤー♪
現在、ルジャナ帝国は中央、帝都の魔導院に向け疾走なう。
俺が預けていた……いや、別に譲渡でもいいけど、とにかくラービーナの魔導水晶の話。
アレが持ち出されたそうな。
持ち出されたっていうと盗まれたみたいだな。
学者さんだか博士さんだかが持ってった。
それについては別に問題ない。
ハンター感覚では面白くないらしいけど。
依頼の品ならともかく、ラービーナの魔導水晶……言いにくいな。幻想水晶でいいか。
幻想水晶はあくまで俺の個人取得物。
それを権力で奪うっていうのが気に入らないらしい。
たぶん、ギルドの何か言い合いあったんだろうな。
ギルマスのバアちゃんめっさ不機嫌だったし。
ちなみに。
「俺たちハンターとしても面白くねぇよ。こういう前例ができるとな、同じように割り込みしてくる貴族さまが出てくるかもしれねぇからな。まぁ……その手の行儀の悪い連中には、プロミネーズ家は容赦ねぇがな!」
「そして、今回やってきた人たちは領主さまでも口出しが難しい相手だった、ということです。魔導院は陛下もかなりの投資をしていますからね。なかなか口出しできないんですよ。そうでなくとも舌戦になると厄介な相手ばかりなので」
だそうです。
別にね? 俺としては放置でもよかったのよ?
最初は。
だって面倒だもの。
それに、大規模な異変の原因だし。
やはり国としては調べないワケにはいかないでしょ?
魔導院とやらの行動もわからなくはない。
なんだけども。
『ラービーナ・ニウィスとやらは、もしかしたら女神の力が関わってるやもしれん』
なんて、言われたらさぁ。
……。
…。
さて。
方角と、人の霊気の規模。
たぶん帝都までボチボチ。
それで?
『どういう経緯かまではワカランがな。おそらくは女神の秘宝の類いじゃろうな。おヌシにはアーティファクトとでも言ったほうがわかりやすいか?』
ようは女神の加護を誰でも使えるようにした道具。
はるか昔。
それこそ、宇宙の始まりと終わりとか、そういうレベルの昔の話。
人間たちを手助けしようと女神たちが産み出した道具。
ご本人たちにとっては恥ずかしい黒歴史らしいが。
『まぁ、なぁ。感謝されるうちはともかく、長いこと崇め奉られている間になぁ。しかも宇宙が巡ってもいつの間にやら具現化しよるけんねぇ~』
ケラケラ笑う女神さま。
若い世代の女神はそんな失敗を見ていたので、皆さん秘宝の類いは作らなかったらしい。
『おっと、話が逸れるところじゃったね。あー、なんだ。それでな、前に聞いたことがあったのを思い出してなぁ。女神の秘宝の力と、女神の加護は反発するのだ……と』
秘宝は加護に比べて弱い。
が、女神の力に違いはない。
故に、抵抗力のようなものが。
なるほどねー。
さぁ、なんだか不安になってきたぞい?