ピリ辛食材と激辛実験・その1
腐れ沼、相変わらず空気が濁ってる。
でもニオイは普通に水辺のアレでさわやか。
頭が混乱するわい。
「ホラホラ、動きを止めるな~! 沼トカゲは見た目より素早いぞ~!」
「うおッ!? チィッ! こんにゃろ!!」
「援護するわッ! “連なる炎の矢”!!」
ベテランの指導のもと、ルーキーたちが沼トカゲ狩り真っ最中。
クラスCがルーキーかはわからんけど。
俺?
戦いの終わりを焚き火にあたりながら待ってます。
毒トカゲと一緒に。
「はぁ……相変わらず人懐っこいですね、このトカゲ。これで血液が猛毒なんだから困りますよね」
膝の上に乗せられたトカゲの頭をなでるシャルミール。
爬虫類にしては手触り良好。
ついなでたくなる感触なんだよね。
しかし血液が揮発性でシャレにならない猛毒なんだよな。
うっかり吸い込めば一週間は下痢止まらず。
たかが下痢。
されど下痢。
脱水その他体力の消耗で死にかけることだってある。
そもそも、一週間も動けないとかハンターにとっては致命的だし。
沼トカゲさえ倒してしまえばトウガラシ集めは簡単に終わる。
あとは、うっかり毒トカゲを傷つけないようにすればいいだけ。
まぁ、コイツら一応魔獣だからな。
人間に友好的なだけで魔獣らしくけっこう頑丈。
どーれ。
おじさん、いっぱい白トウガラシ集めちゃうぞ~!
……。
…。
うむ。
ソリに山盛り3杯。
ちょっと、頑張り過ぎたかしら?
「まぁ、アタシも酒呑むとき食べるし。それに街中の雑貨屋になかったんだろ? なら、むしろ足りないくらいじゃねぇかな」
あー、そういえばそうか。
だがしかし。
素材の独占はハンターのマナーに反する行為。
いくら俺がハンターじゃないとはいえ。
「どうカナー? 腐れ沼なんて普通は来たがらないし。私たちだって、デュランくんが術式でフォローしてくれるからいいけどサ、毒封じのタリスマンだって安くないしー」
ふむ。
トウガラシ、追加。
呑兵衛どももご安心。
うん。
これトカゲ、トウガラシかじるんじゃないよ。
辛いでしょ……あーあ。
悶絶しちゃって。
仲間たちも呆れたみたいな視線してるがな。
毒トカゲが草食でやや雑食よりなのは知っている。
でも少しは選べよ?
「どこの世界にも物好きはおるということだ。気付け薬として噛み潰すこともあるがね、ワシはさすがに生では食わんなぁ」
そらそうだ。
で。
目的の物も、ついでに沼トカゲの素材も積んで。
帰り道の宿場にて。
「追加の依頼、だと? まぁ、私は構わんが……なに? 魔導水晶の式陣を展開してみる……ほぅ?」
やはり試してみたいという好奇心がね?
とはいえ、同意もなしに急に試すワケにはいかない。
危険があることも充分に説明して……。
説明……。
ねぇ、君たち話聞いてた?
なんでそんなに興味津々ヤル気満々なのよ?