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なぜなに精霊トーク、結晶の賢人

「デュラン? どうした?」


 どうしたって、いま、声……?


「声? なにも聞こえなかったけれど。デュランくん、大丈夫? 疲れちゃったのかしら?」


 おっと、頭を心配されちまったい。


 ふむ?


 いわゆる、“脳内に直接……ッ!?”ってヤツね。


 さて、心当たりといえばひとつっきゃないでしょ。


 氷のゴーレム。の、残骸。




『残骸とは言ってくれる。否定はできんがな。かつては大勢のニンゲンに語りかけることもできたが、今ではキサマひとりに声を届けるのが精一杯だ』


 ……そうか。


 ラービーナの支配からは解放されても、もう。


『そういうことだ。……おかしな男だな、ニンゲン。キサマの負うべき責任などないというのに、そんなに不愉快か?』


 だとしても不愉快だね。


 見ず知らずの過去の他人だとしても。


 命懸けで託した、であろう最後の願いが叶わなかった。


 それを見届けるのが面白いワケがない。


『難儀な性格をしている。だが、我はキサマは嫌いではないな。それだけに残念だ。これが最初で最後の会話とは』


 まったくだよ。




 色々聞きたいこともあるのだけど、とりあえず確認したいことがある。


『キサマの想像通りだ。遺跡の存在を隠匿し、氷嵐結界でニンゲンの接近を拒んだのは我だ。アレがエサを欲していたことは知っていたからな』


 若手ハンターたちが遺跡に近づいたタイミングと、守護精霊の力が大きく崩れたタイミングが運悪く、か。


 吹雪が途中から綺麗に途切れてたのはラービーナの仕業だったわけだ。


『遺跡の内部や周囲に魔獣が存在しなかったのもな。もっとも、それはアレが喰い尽くした結果でもあろうが』


 ちなみに遺跡内部がクッソ寒かったのは精霊の力が弱まった結果だそうな。


 つまりはもともとこの場は低温地帯で、精霊の力で当時の人たちは生活できてたワケだね。




『もう少し……会話を楽しみたいところだが、我に残された自我も限界のようだ。あぁ、心配するな。別に暴走するような無様な真似はせん。これでも水を司る精霊のひとつだからな。姿形を変えて、自然の巡りの理に揺蕩うだけよ』


 雨土の理ってヤツかな?


 役目は精霊の姿を失ってもかわらない、これからも人間のことを見守ってくれるのか


 仕事熱心なことだと言ったら笑われちゃった。




 とりあえず、ね。




 氷の精霊よ、感謝を。


 いままで、人間たちを見守ってくれたことに。


 これから、人間たちを見守ってくれることに。


 かつての誰かがそうしたように。


 俺もまた、感謝を。




『……最期に言葉を交わしたのがキサマでよかった。さらばだ、ニンゲン。どこか遠くより、理の外側より来たりし旅人よ』


 ―――!




「ゴーレムが……光の粒になって消えていく……」


「霊気の輝き、ですかぁ……初めて目にする光景ですが……美しいですねぇ……」


 ……消えちゃった。


 精霊。


 さすが、ある意味油断ならねぇ相手だったぜ。


 残されたこれは……魔導水晶、とは違うな。


 精霊結晶、とでも呼べばいいのかな?


 とても強い、そして……柔らかい、優しい力を感じる。




「とりあえず、外に避難しようかね? 探索するにせよ帰るにせよ、若人たちが回復せねばな。どうにも、ままなるまい?」

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