がっつりバトル! 幻想種、氷の妖魔・その4
ぐるりと一周、一斉砲火。
反射的に頭のあたりをかばうラービーナ。
よかった。
狙い通り、ちゃんと防御してくれて。
「きゃッ!?」
執拗に頭を狙ったかいがあるってもんよ。
おかげさまで破壊できましたよ。ゴーレムとの接続部分。
少女の上半身が空中に。
一瞬だけ目が合う。
笑ってますねぇ?
うん、アレでしょ? 地面に落ちればむしろ好都合的な。
ゴーレムを、精霊を侵蝕できるくらいだもの、壁とか床なんて溶け込むのも楽勝だろうさ。
知ってたよ。
前世のマンガ知識だけどね!
術式“渇望せし深紅の乙女”
「な――んでッ!?」
ラービーナを出迎えるのは遺跡の床ではなく。
女性のシルエットの燃え盛る炎。
切り離した寄生体に逃げられるってシチュエーション、定番だからねぇ。
ゴーレムがデカイぶん、足元の式陣に気がつかなかったワケだ。
内心、祝福がバレるんじゃないかとヒヤヒヤしてたけどね。
さぁ、遠慮なく。
―――燃え尽きろッ!!
「――――――ッ!!??」
成し遂げたぜ。
残されたのは魔導水晶のみ。
あとは……よしよし。召喚された氷のナニガシども、崩れたな!
「ふひぃ~ッ! ちっと歯応えありすぎだったぜ……」
「囮役、お疲れ様でしたねぇ。見た目のわりに動きも俊敏でしたし、わたくしでは少し……危なかったかもしれませんねぇ」
「これだけ苦労して魔導水晶は無しか。できれば2度と戦いたくないものだな……」
戦闘が収入源なハンターたちは不満バリバリ。
だろうな。
補助系の術式で支援したけどさ、装備はどうしても消耗するからね。
修理費用のこと考えると今回の戦いは超☆赤字だよね。
それについてはまぁ……自己責任ってコトでね?
ホークアイとサラ、あとはバルドークとギルザ。
この4人はなにかギルドからの依頼らしいから、報酬も用意されているだろうけど。
あぁ、あとはネルガさんもか。
しかしこの……魔導水晶、なのか?
あからさまにヤバイねぇ。
ふむ。
どうよ? 皆の衆。
「迂闊に触らないほうがいいだろうとは思うが……ここに放置するのも危険だろう」
「お宝っちゃ~そうなんだろうけどよ。なんつーか……終わった、って感じがしねぇんだよな」
「妖気の気配はたしかに落ち着いておるがな。研究対象としては非常に興味深いが、なにか起きたときにワシでは抑えきれんかのぉ」
だよねぇ。
ふーむ。
……。
試してみるか。
腕に霊気のガード。
その上に魔力のガード。
その状態で霊気のガードに祝福。
魔力のガードに異変が起きたら即パージするように。
よし。
どれどれ~?
うん。
魔導水晶だけど。
なんだろうね。感触というか、雰囲気というか、危険なのはよくわかる。
あと、これ、たぶんまだ普通に生きてるね?
手のひらになんかこう、グニグニくる感覚が。
祝福のパージが発動しないので魔力のガードはちゃんと機能してるんだろうけどさ。
……となると、魔力には干渉できない?
んんー?
さっき、部屋に残された文章には“遺跡が迷宮に侵蝕された”みたいなコト書かれてたじゃん。
したらコイツが、ラービーナが遺跡を迷宮に変えたと思うじゃん。
でも魔力に干渉できないなら、ムリじゃん?
やべぇ。
何も解決した気がしねぇ。
とりあえず封印だけしとくか。
懐にしまっていた包帯を祝福、魔力を常に纏うように。
で。
魔導水晶ぐるぐる~♪
よし。
『―――見事だニンゲン。助かった。礼を言おう』
え、誰?