がっつりバトル! 幻想種、氷の妖魔・その3
「ふぅ……さすがのわたしでも驚きました。まさか精霊の加護なしでマーブル・ミスティックを使えるだなんて。お兄さん、若いのに優秀な術師なんですね?」
マーブル・ミスティック。とは?
たぶん、今俺がやった連続術式のことだとは思うんだけど。
なるほど。
すでに存在する技術だったか。
独学でそこにたどり着いてしまったのか、俺。
さすが。
やっぱ遊び心って、大事なんやなって。
しかし。
若いったって、俺もう[ピー]歳なんだけど。
「うぇッ!? デュラン、お前! 俺よりも歳上かよッ!」
「若いのにずいぶん落ち着いてるとは思ったが……」
「人は見た目によらない、って……本当ねぇ……」
あー。
ジンガー、ホークアイ、ラムステラは知らなかった組か。
年齢の話になると驚かれるのも慣れたよ。
もっとも。
俺に言わせりゃ、この世界の住人のが年齢わかんねぇよ?
角とか耳とか尻尾とか。
そういう部分は変化するけど、顔とか若いまんまだもん。
ま、それはともかく。
攻撃そのものが通じるならそれでよし。
倒れたふたりが心配。
ネルガさんが手当てしてくれているけどさ。瀕死だったからね。
早めに決着つけちゃいましょう。
「むぅ? 簡単に言ってくれますね。ですがお兄さん、あまりわたしを甘く見ないほうがいいですよ? 古き時代より幻想と謳われるのは伊達じゃありませんから」
うほー。
めっちゃ妖気が高まってますねぇ!
でも怒ってるワケではないらしい。
むしろ、楽しんでるのかな?
個人的な感想。
こやつ、自分が上位の存在だと自覚しつつ、でも人間を見下すとかそーゆーアレはないっぽい。
挑んでくる俺のこと、面白がってるな。
ふむ。
残念だ。
実に、実に残念だねぇ。
俺ひとりなら戦いを楽しむところだったのに。
祝福。さぁ、いこう。
条件付けは三つ。
ひとつ、ラービーナを狙うように。
ふたつ、精霊の部分を避けるように。
みっつ、仲間に当たらないように。
身体能力をガッツリ強化して、ラービーナの周囲を飛び回る。
式陣を展開しては移動。
とにかく多角的に攻めまくる!
「っと! 術師にしては、よい動きをしますねッ! ですがその程度ではッ! わたしの妖気を削りきるのは難しいですよッ!!」
んー、な~かなか!
一応ゴーレム部分を避けて本体へ飛んではいくけれど、やはり本体に近付くほどに祝福効果が弱まるっぽい。
でっかい氷の腕で打ち消されたり。
あと本体がそもそも強いんだろうな。
なにか、向こうも術式っぽいもので迎撃してくる。
それでも多少は当たってるんだけどね。
まぁ再生されちゃうよね。
祝福結界に巻き込んで粉砕すれば早いのかもしれないけど。
どうかな~?
祝福の効果が弱まるとなれば、祝福で作った領域だってどうなることやら。
リスク、高め。
本来は時間や空間を支配するタイプの加護ではないよ? と。女神さまからは言われてたからねぇ。
……。
…。
ガンガン撃ち込む。
バシバシ撃ち込む。
とことん撃ち込む。
削っては再生されて、削っては再生されて。
「うふふ。根競べですか? いいですよ! いくらでも付き合いますよッ! さぁお兄さんッ! もっと! もっとッ! わたしと踊りましょうッ!!」
根競べ? まさか!
こっちは最初から短期決戦狙いですよ?
祝福、停止。
式陣の認識阻害を解除。
「――――ッ!? 包囲ッ!? いつのまに……ッ!?」
ふー、ようやく驚いてくれたかい。
罠、張らせてもらったよ。
目に見える攻撃は全部ダミー。
本命はラービーナの周囲に祝福で隠した式陣を展開すること。
本体さえ近づかなきゃ大丈夫だろうと仕掛けてみたが、ビンゴだねぇ!
質より量で。―――貫けッ!!




