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元マリオネットは歓喜し、望む


結局、セオがプレゼントしてくれた。

このお店は工房で加工もしてくれるので、魔石はバレッタにすることに。土の属性を持つ魔石だから、相性の良い防御の魔石にすることになった。

1時間後には注文したバレッタも出来るので、それまでの間はお出掛けすることに。


で、セオが台座を選んでくれたんだけど、その。

魔石をツタが絡むように包む繊細で素敵なデザインの台座、なんだけど……、

黒曜石、を、選んでた…。



ごめんなさい、叫ばせてください。


~~金茶の魔石に黒の台座って、まんまセオの色ーっ!!



うあぁぁくぅぅぅ!嬉しいぃぃぃ!

異性に自分の色を贈るのってここでは告白に近い意味だった筈だけど、偶然なんだろうなぁ。わかってても嬉しい!

顔が煮崩れそうっ


「リン?どうかしましたか?」


「~~~なんでもありませぇん!」


しまった隣にいたんだったぁぁ!!思いっきり顔を緩ませてたぁぁ!!

店の前で大声あげたから通行人に見られてるし!恥ずかしいっ


「考え事しながら歩くと人にぶつかりますよ?」


「そうだよね、ごめ───ん?」


何故かセオの手が目の前に差し出されてる。

……えーと、これは?


「逸れないように手を繋ぎましょうか、リン。」


「ふ、ぇ。」


やばいやばい顔が熱い動悸がすごい。今日が私の命日ですか。

こちとら前世から色事とは無縁で生きてきたんだからね、純情さ舐めんなよですよ!


「……嫌、ですか?」


「喜んで繋がせていただきます!!」


セオが悲しそうに手を引こうとしてて、慌てて両手で掴んでしまった。ハッと気が付いた時にはもう遅い。セオってばちょっと肩を震わせて笑ってる。


「~~~なんか今日のセオは意地悪だ!」


「ふふっ ……すみません。我ながら驚きですが、かなり浮かれているようです。」


「え?」


いつも冷静なセオが、浮かれてる?なんで?


「大分歩きましたし、少し休憩にしませんか?この先に女性に人気の店があるそうですから。」


「あ、うん。……~~~~っ!?」


掴んでた手を一度はなされたと思ったら、改めて指を絡めて繋ぎ直された!

うわわ、セオの手って思ってたより冷たくて気持ちいい。

これか、これが伝説の恋人繋ぎか!


ワタワタ慌てる私を他所に、セオは機嫌良さそうにしてるし。な、なんか余裕で悔しいっ。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「うわぁ、なにこれ……っ!!」


お店に入った途端、思わず声が漏れちゃった。

いやそれぐらい凄いんだよ!照明の落とされたお店の中が、まるで海底にいるように蒼く照らされてて、そこかしこにフワフワと透き通った花びらが舞い光が舞い散ってるの。時折空から滝のように幻の水が降ってきたり、これまた透き通った蝶や鳥が気まぐれに飛んでる。天井はまるでプラネタリウムみたいに星がキラキラしてるし。

何この幻想的な空間!?


「幻影の魔法ですよ。ここのマスターが魔法学園の出身だそうで、魔道具にオリジナルの魔法を組み込んで起動させているようです。」


立ち止まっちゃった私を半個室になってる席へ誘導しながらセオが説明してくれる。

さすが魔法のある世界!いいなぁ、素敵だなぁ。

私も魔法は使えるはずだけど、私自身はまだ使ったことないんだよね。『シェリナ』は火と氷の魔法を得意としてたけど。身体は同じなんだから使える筈だよね。

こんな幻想的な魔法は無理だけど、使えたら便利だと思う。

……うーん、よし!


オーダーを取りに来てくれたウェイトレスさんに注文を済ませて、セオに向き直る。


「セオ。私に魔法を教えてくれない?」


唐突な私の申し出にセオは軽く目を瞠ったけど、すぐに微笑んで


「どうしたんですか、急に。それ程にこの店の魔法が気に入りましたか?」


「うん、それはすっごく気に入った!でもそれだけじゃなくて、私の資質は火と氷に特化してるでしょ?使えて損はないかなぁって。学園で魔法を学んではいるけど私は実践してないし、改めて学びたいの。」


火と氷ってことは、氷を出して火で溶かせば水が確保できるから水不足の時なんかには役に立てそう。何もない所でも火で料理から加熱消毒まで出来るよね。あとは消火活動?……まてよ、ここでは高価すぎる魔石を使った冷蔵庫&冷凍庫もお手製で作って病院に設置できるのでは?はっ、ここにはないクーラーやエアコンを再現できるんじゃ!?


ついつい欲望が駆け巡ってしまう。多分百面相してたんだろうなぁ、セオが噴出して笑った。


「かしこまりました、リン。何やら色々と思いつかれたようですね?」


「うん!もしかしたらもっと領地の病院を快適に出来るかも!」


「ならしっかり私の授業についてきてくださいね。」


「う。えぇと、お手柔らかにお願いします。」


ペコリと頭を下げて顔をあげると、バッチリと目が合う。

なんだか無性におかしくて二人で笑ってしまった。



思いついた魔法活用法をセオと話しあって一息ついたところで、タイミング良く注文したお料理が運ばれてきた。もしかしたらタイミングを計られてたのかな?そういう雰囲気とかムードとか大事にしてそうなお店だもんね。


注文したお料理は素材から厳選されてて、庶民の入るお店としては値段がはるけど、その分納得できるお料理ばかりだった。


「美味しいー!セオ、よくこんなお店知ってたね?」


女子受けしそうなムードある内装のお店を、どっちかというとインドア派のセオが知ってる不思議をそのままぶつけたら、なんか目を逸らされた。


「いえ、その…。」


「…セオ?」


ん?ちょっと待って?

何故そんなに気まずげ?………まさか、誰かとデートして、知った……とか?


嫌な予感が胸の内を駆け巡るけど、それはすぐに次の言葉で吹き飛んだ。


「昨夜ネイアに今日の事を知らされまして。……情報収集するにも時間がなく……、慌ててメイドを片っ端から捕まえて各お勧めの店からデート相手に望むことまで教えて貰ったんですよ……。」


「………。」


ポカンと口があいてしまう。


セオが?

メイド達を捕まえて?


───私の為に?



「ぷっ クスクスクス……ッ!」


想像したら可笑しくて、何より愛しくて、幸せな感情で満たされる。

笑いだしてしまった私にセオは珍しく感情あらわに拗ねた顔で、


「笑い事じゃありませんよ!メイド達が面白がって、部屋に下がっていた者までアドバイスに来る始末で!」


「ごめっ、でもその光景は見たかった!」


ついつい本音をもらしちゃって、ますますセオが拗ねるのがわかる。


───こんなにセオを身近に感じるのは初めて。

いつもどこかセオは私との間に壁を作ってて、それが少し寂しかった。

それにセオの感情をこんなに感じるのだって初めて。

生まれと育ちのせいかな。セオはいつだって自分の感情より周囲の状況で行動を決めてるみたいだった。



───もっと、セオの傍に近づきたい───



気付けば、私の口は、私の望みを口にしていた。






「……私、セオの事が好き。セオの一番近くにずっといたい。」



リン、予定外の暴走。ごめんセオ!プロポーズは君からの筈だったのに(笑)

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