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召喚勇者、人間やめて魂になりました  作者: 暇人太一
第二章 新天地と始まり
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第三十話 新入りはモフモフ

 翌日、ゲロの海でグッタリしていたモフモフが目を覚ました。


 モフモフを街に入れるときはテイムしたと話し、宿では従魔と一緒に過ごせる部屋に移った。モフモフをテイムしたと言ったときは警備兵にはいい顔をされなかったが、テイムしたモンスターや動物を街に入れないということは彼らにはできない。何故ならば、動物に絶対はなく商人や貴族が使う馬車も使用できなくなるからだ。


 ただし、従魔が起こした問題は全てテイムした者が責任を負うというものだ。それ故、保険として義務づけられていない拘束の首輪や隷属の首輪を、個人の判断で着けさせると警備兵に聞いた。つまり、着けろと言っているのと同じである。聞いてもいないのに店の場所を教えて来たのだから。


 逆に宿では岩窟熊がいるおかげか歓迎された。




「ガルゥゥゥ……」


 鳴きながらまぶたを持ち上げるモフモフは周囲を見回して、最後にリアの方を見る。それもじっくりと観察しているかのように。


 このモフモフは、基本的に赤い毛皮で首周りや肉球周辺は橙が混じった黄色の毛をしており、虎とライオンを足したような五十センチくらいの猫だ。瞳の色は紫色で、頭には赤黒い二本の小さな角がある。


 そして一番驚いたのは、このモフモフは俺の《読取(リーディング)》を弾いたのだ。


 モンスターにも使えることは実証済みであるが、目の前のモフモフは寝ているという無防備な状態にもかかわらず簡単に弾いたのだ。驚かないはずない。


 このモフモフも愉快犯の差し金なのか? でも何も言っていなかったし、再び現れることもないから違う理由かもな。


「ガルゥゥゥ」


 モフモフはリアの胸に飛びつきスリスリと顔をこすりつけている。


「可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃー!」


 けしからん! 何て羨ましいことをしているんだ。それにしても、コイツもリアにやられてしまったようだな。


 リアにはモンスターを落とすスキルでもあるのかと思わないでもないが、要因の一つは間違いなくファンタスティックサイズの禁断の果実のせいだろう。


「んっ? アルマ……どうしたの?」


「えっ? あぁ……知り合い?」


「ううん。初めてみた」


 何とか誤魔化し、俺はモフモフに近づく。モフモフは俺を一瞥すると、再びスリスリを楽しんでいた。このモフモフは俺を警戒していないらしい。


「それでどうする?」


「この子のお母さん心配していると思う……。返してあげたいな……」


「えっ? モンスターのお母さんに……?」


「……うん。なんか悪いモンスターには思えなくて……」


 俺のスキルを弾くモンスターの親……。軽く見積もっても昨日の巨大鳥以上の強さだろう。モンスターの善し悪しに関係なく、自ら死地に向かうようなものである。


 でも俺には選択権がない。あの愉快犯に「よろしく」と言われた以上、リアの願いを聞いてあげなければならない。それに、お肉以外の目的を持つことは旅をする上ではいいことだと思う。


「返しに行ってもいいけど、従魔のフリができなきゃ無理だぞ?」


 というのも、俺は盗賊の所持品の中に首輪のような物があることを思い出し、街に入る前にすでに試していた。しかし、このモフモフに首輪をはめようとしたところ首輪が砕け散ったのだ。


 スキル以外のテイムの方法が首輪だけであり、首輪が無理なら修業してスキルを身につける以外はない。つまりこのモフモフの現在の状況は、捨て猫を拾ってきたが飼うことができないのと同じ状況である。再びのリリースもあるかもしれない。


「私の言うこと聞けるもんね! お姉ちゃんの言うことをちゃんと聞ける賢い子だもんねー!」


「ガルゥゥゥゥッ! ガル!」


 リアは証明するようにトイレの場所を教えて、人を攻撃してはいけないと説明していた。攻撃するときはリアや俺の指示が出てからだと教え込み、モフモフは頷き返事をしていたのだ。


「アルマ、名前つけてあげよう! 何がいい?」


 「何がいい?」とは聞いているが、リアはつけてと言っているのだろう。要は丸投げである。


「俺の世界の火の神様と強力な武器の名前から『ヴァルカン』ってどうだ? 愛称は『ヴァル』で!」


「いいねー! 君は今日からヴァルだぞ!」


「ガルゥゥゥゥーー!」


 モフモフも嬉しそうに返事をしていた。気に入ってもらえて何よりだ。


「ついでにパーティー名も思いついたぞ」


「どんなのー?」


「『三銃士(トライデント)』っていうのはどうだ?」


「いいじゃん! いいじゃん!」


 ネーミングセンスがない俺としては頑張った方だと思う。俺は赤い毛皮を持ったヴァルを見て、火魔法を使いそうだと予想し、三人とも飛び道具を使うことから『三銃士』と思いついた。さらに、近接武器も使うことから三叉槍の意味である『トライデント』の読み方にしたのだ。


 この世界の言葉での『トライデント』は三叉槍や三人組の戦士という意味らしく、ちょうどいい言葉でもあった。


 正式な仲間入りを理解したのか、ヴァルも喜びの声を上げていた。


「それで今日は何するの? お肉食べるの?」


「今日は街の端っこにある解体倉庫を借りて解体作業を行う」


「ギルドにやってもらわないの?」


「自分でやれば今回の分で戦士(ウォリアー)ランクへの昇格試験資格を得られるはず。それにまだ解体してないから肉はないよ」


 先日の爆買いで本屋に行ったときに購入した『真・モンスター図鑑』は、本当に素晴らしい物だった。それ故、価格も大金貨三枚くらいしたが惜しくはない。


 内容の詳細を簡単に挙げると、階級の説明やモンスターの詳細に魔法具の説明、守護者ギルドのランク別モンスター階級と依頼内容の概略だ。この他にもいろいろ載っていたが、特に興味を惹いたものを挙げてみた。


 階級の説明は簡単に書かれていたが、おおよそのことは分かったから満足できた。


 災禍級 = 聖騎士   = 帝級

 災害級 = 金剛騎士  = 王級

 凶禍級 = 白騎士   = 将級

 争乱級 = 騎士・戦士 = 兵級

 危険級 = 戦士・兵士 = 民級

 害悪級 = 新兵    = その他


 階級と守護者ランクに素材内容が書かれている表が記載されていたのだが、表の下の方に注意書きとして未解明の階級が存在することが書かれていたのだ。


 まぁ人間が対応できたモンスターしか記録に残すことはできないだろうから、当然と言えば当然だ。


 さて、何故この本についてを話したかというと、表の戦士(ウォリアー)の文字と魔法具の階級に注目して欲しい。


 始めに、あの森のモンスターのほとんどは争乱級以下であること。次にスタンピードによって二百体ほどのモンスターを大量確保したこと。続いて守護者は上下ランク一つ以内ならば、好きに仕事を選べること。ただし、下の依頼を受けた場合はポイントが半分になる。最後に、危険級のモンスターより上の階級が魔法具の素材として使用されるようになる。結果、兵士ランクから採取依頼が激増すること。


 これらに本の知識で得た裏技を足すと、今回だけでポイントが千ポイントを超えられる上に、肉をしっかりと確保することが可能になるのだ。


「ということだ。分かった?」


「うー……うん。分かった!」


 リアに作戦の説明をしたのだが、どうやら分かっていないらしい。だが、お肉のために解体作業を頑張ると意気込んでいるから大丈夫だろう。


「じゃあ解体倉庫に行くか!」


「うん! ヴァルも行くよー!」


「ガルゥゥゥゥーー」


 ヴァルもお肉が待っていることが分かっているのか、リアに続いて走り出していくのだった。




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