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闘技場の解説者  作者: 破壊と絶望の申し子
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3人の秘密

ロイが探険者組合を出てすぐに、入れ違いでアルフレッドが組合に入った。


「おはよう。今日はいい天気だな」


もうお昼近い時間なので、職員も探険者も大勢いてとても賑わっている。アルフレッドが来たため、マリオスとオレリアは話を聞こうと近づいていく。


「丁度いいときに来てくれました。ロイ君についてお話しがあるんですけど、今お時間空いていますか?」

「俺も是非聞きたい。とんでもないぞあいつは!」


オレリアがどういうことが早く聞きたい様子で、早口になっている。マリオスも興奮を抑えきれていない。

一方でアルフレッドはそんな反応になると思ってたようで、苦笑いしている。


「まあ俺とお前らの仲だしな。とりあえず場所を変えよう。ここじゃ落ち着いて話せない。俺の部屋に行こう」


マリオスとオレリアも同意したため、奥の支部長の部屋に向かう。


「今から話す事は他言無用だぞ。あまりロイも知られたくはないだろうしな」


2人は頷く。


「まず、お前ら2人には俺が受けた依頼先で保護して、面倒みる事にしたって言ったよな?」

「そうですね」

「そうだな」

「保護した場所はトロル村ってとこなんだが、聞いた事はあるか?」


オレリアは頭の中の知識を探るが、そんな名前の村は聞いたことがない。マリオスも同様だ。そんな2人の様子を見て、アルフレッドは話を続ける。


「まあ知らないのも無理はない。その村があるのはエリア7の秘境で、地図にも載ってないからな」

「「エ、エリア7!?」」


2人は話を聞いて声を揃えて、目を大きくして驚く。このヒストリア大陸は東から西にかけて魔力が濃くなっていき、魔物もそれに応じて強くなっていく。今いるアークエイジ王国はエリア1で大した魔物はいない上、魔力も薄いため、魔物の発生率も少ない。大陸の東側の3分の1はエリア1と呼ばれ、そこから西に行くごとに数字は増えていき、最終的に確認されてないが、エリア10まであるという。エリア1が1番広く、数字が増えるごとに狭くなっていく。現在エリア7以降に行った者は確認されていないため、2人の驚きは当然のことだ。


「そ、そんなところに村なんてあったのか…。でも何でアルさんは知ってたんだ?」

「ああ、昔世話になった人がトロル村の人と交流があったようでな。場所教えるから様子を見るよう依頼を受けたんだ」

「1人でエリア7まで行って子供連れて帰ってくるなんて…流石は極地までいった剣士なだけありますね」


レベルは30が上限であり、そこまでレベルを上げた者は極地到達者と呼ばれる。到達者はほとんど確認されておらず、凡人は高くても10近辺で限界を迎えると言われている。


「でも一緒にいて思ったが、おそらく俺よりロイの方が強いぞ?」

「そんな訳ないじゃないですか。あなたは最強の剣士なんですよ?」


オレリアは呆れながら答える。


「いや、俺が3回ぐらい切って倒す相手を1発殴っただけで倒してたぞ。なんか熊みたいなオーラが出てたし」

「え?いや見間違えじゃないですか?いくらなんでもあの子にそんな力があるようには見えませんが…」

「妹よ。さっき言い忘れたが、あいつ500㎏の握力計握り潰してたぞ」

「えっ……?」


絶句するオレリアにアルフレッドは話を続ける。


「さっきロイを村で保護したって言ったが、その時あいつ1人だけいて、他に生き物の気配はなかった。魔物の大群に村は占拠されて、皆殺されたそうだ。」


話を聞いて2人は悲痛な顔をして俯く。だが1つ気になることがある。


「あれ?でも村にはロイ君1人だけってどういうことかしら?魔物はどこへ……?」

「……おそらく、あいつが1年かけて全滅させたんだろう」

「「…………っ!」」


無言の時が流れた。とても正気ではない。魔物の大群、しかもエリア7の。あんな少年がそれを成し遂げたというのだろうか。命がいくつあっても足りない、死と隣り合わせの日々だったはずだ。


「この後話す事は俺の予想というか勘だが、あいつのレベルはおそらく30じゃない。いや、レベルというかステータスか。多分ジョブチェンジしてる」


ジョブチェンジとはレベルが30になったときにスキルと半分のステータスを引き継いで、また別のジョブでレベル1から始めることである。スキルを引き継げる上に、またレベル30になれば、ステータスは本来より高くなる。しかし最初はレベル15相当までステータスが下がるうえ、レベルはさらに上げ辛くなる。30がゴールというのが一般的な考えなのだ。


「……信じられないけど、この文字化けだらけの結果は本物なのね。100超えるとこうなるって判明されているし。アルさんも力はそうでしたっけ」

「到達者で剣士なら力が、魔道士なら賢さや魔力が、って言われている中で、ほとんどがこうなってるとはな。流石に俺も驚いたな…」

「俺は握力計破壊したのを見たから力に関してはそうだろうと思っていたが、まさか他にも100超えがあるとはな…」


100を超える数値は測定出来ない。3人は思わず顔を見合わせて苦笑いする。


「まあ、この事は公にしない方がいいですね。大事になってしまうわ」

「でも、これほどの強さがあるならエリア7以降にも行けるんじゃないか?人類未踏の地だぞ?」


マリオスは珍しくもっともな事を言うが、これに対してアルフレッドが神妙な面持ちで答える。


「確かにそうなんだが、あいつには辛い目にあった分、少なくとも今は出来るだけ平和な生活を送って欲しいんだ。」


大切な人たちを魔物に奪われて、平和だった日常は壊れてしまった。復讐のために長い間、何度も死にかけながら戦い、そして魔物を全滅させた後、彼には何が残ったのだろうか。あの時初めて会った時に見た顔には覚えがある。彼の気持ちを考えると心が締め付けられるようだ。


「頼む、あいつには死ぬ可能性が高い事はさせたくない。少なくともあいつ自身が望むまでは。あいつの事を教えた手前こういう事を言うのはなんなんだが、黙っててもらえないか?」


アルフレッドは2人に頭をさげる。オレリアとマリオスは顔を見合わせると、静かに頷く。


「頭を上げてください、アルさん」

「そうだな、流石にそんな経験をした少年に対して死地に行けとは言えないな。俺らは喋らんよ!」

「……ありがとうな」

「とはいえ、その強さを見込んでやってもらいたい事は結構ありますね。駆け出しの子に指導とか」

「この辺のエリアなら全く問題ないだろうし、それもいいかもな。後でロイに言っておくよ」


ロイの強さは王国には報告しないということで話は終わり、3人は仕事に戻った。








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