収穫祭1
寒くなってきた。秋特有の匂いの風を感じながらそう感じる。田畑では麦が金色に光っている。そろそろ収穫祭だ。
今日は彼と一番村から遠い畑でカボチャの収穫に来た。寒い冬に備え村で一斉に作物を収穫し夜に年に二回の収穫祭を行う。彼ははしゃぎながらカボチャを収穫しては私にこんなに大きな物が取れたと見せてくる。
負けじと大きそうなカボチャを見つけ持ち上げようとしたが、想像以上に重くうしろに大きく倒れる。
「おいおい大丈夫かよ」
彼がからかいながら手を差し伸べくる。
「ごめん。ありがとう」
彼の手を握った瞬間強い力で引っ張られほとんど自分の力を使わずに起き上がる。ああ、やっぱり男の子なんだな。と改めて感じる。
それにしても大きいカボチャだな、と私が持ち上げようとしたカボチャを見る。
「確かにそうね。ほかのカボチャに比べるとかなり大きいけど」
少し彼が考えるようなそぶりを見せる。
「なあ、1つ考えがあるんだが」
彼がいたずらを思いついた悪童のような顔をする。
「これはさすがにまずいんじゃないかな」
彼を諭すように言う。
大丈夫だよ。1つ食べたくらいじゃ誰も気づかないって。と斧を持った彼をあっけからんという。
「そういう問題じゃないんだよ」
とあきれながら答える。
へーき、へーきと彼は言いながら斧を大きく振りかぶる。
大きな掛け声とともに振り下ろした斧はカボチャは真っ二つに切った。
と思ったのだがカァン!と甲高い音を放ち斧がはじかれる。
「いってぇ」
はじかれた反動が跳ね返ってきた彼がうめき声をあげる。
「手赤くなっちゃったよ」
彼が赤くなった手に息を吹きかけながら悪態をつく。
「これ…普通のカボチャじゃないのかも」
普通のカボチャが斧を弾けるはずがない。
ならこのカボチャは普通のカボチャじゃないのだ。
「でもさ、普通のカボチャじゃないならどんなカボチャなんだよ」
「さすがにそれはわからないよ。鑑定士のギフトを持っている人に聞くとかじゃないとさ」
村に1人鑑定士のギフトを持っているおばあさんがいたはずだと彼にいう。
じゃあその人にさっそく聞きに行こうと、やる彼を抑える。
全てのカボチャを収穫してから聞きに行こうと彼を説得してカボチャの収穫に戻る。
この村に似つかわしくない重農感のある館の前に来た。
これまた頑丈そうな扉がある。その扉を彼が勢いよくノックする。少ししてから扉の向こうでガタガタと音がする。
「はいはい。鑑定の御用で?」
ドアが軋む音を立てながら少しあきしゃがれた声が聞こえる。
「このカボチャを鑑定してほしいんですけど」
カボチャをもった彼が少しだけあいたドアをのぞき込みながら言う。
「これは魔物の一種だね」
どれどれとまのびしていた声が少し緊張身をあびる。
鑑定士いわくこれは魔物の一種でとにかく硬いのが特徴なのだとか。
「それで、このカボチャはどこにあったんだい」
声だけしか聞こえないが焦りが伝わってくる。自分たちが何かしてしまったのではないかと。
彼が盗み食いをしようとしたことをのぞきすべてを話すと老婆は急いで村の大人をここに呼ぶように伝える。
今回は物語の核心をつく部分であり文字数が多くなってしまいました。
「収穫祭」は何個かに分けて書くつもりです。
なお文字数が多くなり進行も遅くなるので今までの形式を取りやめようと思います。
これからはエルメ視点で描くつもりです