表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生屋のてんちゃん

作者: Suzuki-Romy

 俺は走っている。



「しーーんーーで」



 間伸びした僅かに舌ったらずの甘い声。



「いーーやーーだっ!」



 咄嗟に前に転がる。頭上を何かが通過する。


 アスファルトを転がったので体が汚れているだろうが今は払う手間も惜しい。すぐに立ち上がり走る、走る。


 少し振り返れば馬鹿みたいに大きい鎌を抱えた小学生か幼稚園児くらいにしか見えない女の子が溜め息をついている。面倒くさいという気持ちがありありと伝わってくる。


 だが、その目的は俺を殺すことだ。おおいに面倒くさがって、できれば諦めてもらいたい。


 全くなんなんだこの状況は!? 常軌を逸している。


 思えばここ最近不幸続きだ。


 目の前で子猫がトラックに轢き殺され、空からは鉄骨が降ってくる。噂の通り魔には遭遇するし、マンションの上からの植木鉢の連続投下には肝が冷えた。しまいには今、デカイ鎌を持った幼女に追いかけられている。


 俺が何をしたっていうんだ。


 ────っ!?


 住宅街の細い裏路地を曲がった先、目の前の道の左右の角から白いフード付きローブの集団が現れる。皆、手にはナイフを携えており、アブナイオカルト集団にしか見えない。幼女のお仲間の可能性の方が高そうだ。


 慌てて引き返すが────、


「おーーしーーまい」


 いつの間にか大鎌の幼女が後ろにいた。


 逃げ道はない。自然と道の中ほどの塀に追い込まれる。



「だっ、誰かた────」


「無駄だよ? 知っているよね、何故かこのあたりには人が一人もいないってさ」



 分かっている、そんなこと。逃げている間に散々叫んだんだ。窓割って逃げ込んだ家もあった。けど、誰もいないんだ────誰も、助けて、くれ、ないんだ……


 俺はその場にへたり込んでしまった。


 白ローブがぐるりと周り込み正面には幼女。どうやらオカルト集団の中心はアブナイ幼女で間違いないようだ。包囲は狭くなっていく。



「な、何なんだよっ! お前らは!?」



 思わず口をついて出た言葉、幼女は足を止めた。



「……うーん、そうだねー、うん。冥土のみやげに教えてあげる」



 幼女は見た目に似合わぬ艶っぽさ出しそう言った。



「時に世界の危機、はたまた停滞した世界の発展、あるいは神々の遊戯にと必要とされる転生者! そんな転生者をご要望答えて神々にお届け! 転生屋のてんちゃんとはわたしのことよ!!」



 全く意味がわからない。けれど幼女は待ってくれない。



「ふふっ、わたしをここまで手こずらせてくれたのはあなたが初めてだわ。褒めてあげる。でもあなたの悪運もここでおしまい、ハッピー異世界転生ライフへ行ってらっしゃい♪」



 脳内で理解する間もなく大鎌が振られた。


 世界が傾いていく、あっ────俺の首が落ちたのか。










 転◯転◯転◯転◯転◯転◯転◯転◯転◯








 今回のターゲットは非常に手こずらせてくれた。子猫を見殺しにするわ、歩いていたのに急に止まって鉄骨避けるわ、通り魔倒すわ、植木鉢の雨を神回避するわでことごとく転生させてくれない。最終的に強硬手段に移るほかなかった。


 いやまあ、子猫の見殺しは常識的には正しいけどさぁ、どうなのよ?人情的に。


 社会への影響力の低さの割にスペックの高さがあったから当たりだと思ったんだけどなぁ……スペックの高さがネックとなるとは。


 まあ、かなりの高値で売れそうだから良いんだけどさ。


 わたしは眷属たちに解散を告げ家路についた。




 わたしは転生屋のてんちゃんこと日本のサブカル的転生の概念神である。ただし最近生まれたため神格が低い雑魚神である。


 わたしは転生屋なんてものをやっている。業務内容は別の世界を管理している神々相手にわたしの権能で転生者を作って引き渡すこと。代わりにわたしは奇跡を起こす元、神格を決める神力を代金としてもらう。あいつらは気前がいいためバンバン神力を落としてくれる。ただし、この世界の神々の一部が上前をはねていくが……


 しかしながら転生屋業務は非常に面倒だ。この世界を下手に荒らすと管理者の神々に消されてしまう。なので人間社会に配慮して、対象の社会的影響力を鑑みなくてはいけない。そういう意味ではいつ蒸発してもおかしくないブラック企業の社畜や存在するだけで害悪なヒキニートが最適だ。


 ただまあ社畜あたりは社会人ゆえに交友関係の調査が面倒だ。そしてヒキニートは転生しても役に立たないことが多すぎて人気がない。まあ一部のギャンブル好きの神がガチャ感覚で買ってくれるが。


 学生あたりも影響力は低いが役に立たない。所詮はガキなのだ。ただし、神々の言うことをホイホイ聞きやすいために神の尖兵としては使いやすいため安定した需要がある。更に遊戯目的ならクラス丸ごと転移的転生を行えば人間模様が楽しいと大絶賛だ。ただしこっちの神々への袖の下はかさむのであまりやらない。


 あと男は単純に御しやすいために女性より需要があったりすることくらいか。


 そして今日も神々からご注文が入った。



『気に入らない種族が調子ぶっこいているので粛正用の尖兵をお願いします。 byエリシア』


『無様な感じが見たいので重度のヒキオタニートよろ byエルダディーテ』


『俺んとこの世界が地味だから派手派手にしてくれる子頼むわ(^人^) byチャラ神』


『TSのしがいがある男プリーズ byロリ神』



 全く、こんなのを信奉する人間達の気が知れない。


 わたしは街へ繰り出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ