私は魔王の娘
ここまでの話でわかったと思うが、私は魔王の娘なのである。
名前はシャスフィリア=レアイド。
レアイドが性でシャスフィリアが名前ね。
旅立つ時には門を通るのだけどその門の開門時間が太陽が出る直前だけなのよね。
だからこんな時間に起きなきゃなんない訳だけど。
とりあえず…身支度よね。
「召喚…オリジンフェアリー。」
ポンッという小さな音と共に緑色の小さな妖精を召喚した。
ちなみにこのオリジンフェアリー。オリジン、つまり原点のフェアリー、その位はどの妖精よりも上で、神霊より少し下程度なのだが、こんな存在をお手伝い程度に呼び出す者など、どこの世界を探してもいないだろう。
「オリジンフェアリー、今日は旅立ちの日なの。うんと可愛い服をお願いね。」
オリジンフェアリーは小さくコクリと頷くと虚空から服を取り出した。
オリジンフェアリーは原点、ということから妖精に可能な事は全て行えるのだが、この事を説明しだすと、精霊の属性や、妖精の能力についても話さないといけないので、ここでは所謂アイテムボックス的なものだと思ってくれればいい。
「あら、可愛い服ね。気に入ったわ!」
そう言うと妖精も頷き、少し微笑んで消えていった。
すぐにその服に着替え、シャスフィリアは言う。
「ミル!準備は?」
「はい!大丈夫です!」
ミルも既に行く準備は万端のようで、すぐに動けるように待っていた様だ。
「私はお父様とお母様に挨拶してからいくから、門の番に話しておいて~!」
「分かりました。先に行っておきますね。」
私はお父様とお母様に行ってくるという旨を伝え、すぐに城を出た。
「さぁて、行くわよ!」
城を出てから3分ほど小走りで西の方に行くとミルと門の番のケルちゃんが話してるのが見えた。
ケルちゃんとはの門の番人ケルベロスの事だ。
ミルも私が来たことに気づいたみたいね。
「お嬢様、お待ちしておりました!お話はつけておきましたのですぐにでも出発出来ますよ!」
「そうね、ありがとうミル。ケルちゃんもまたね。」
そう言って、門の中へと進んで行く。
ケルちゃんは頭を垂れて黙って見送ってくれた。
この門は魔界と人間界を繋ぐワープホールの様なものになっていて、昔のすごく力の強かった魔王が人間界を滅ぼすために作った物らしい。
門の出口から出るとそこには……
戦闘中だった。
兵士が雄叫びを上げ敵将を討ち取らんとしている。
思わず私も声を上げてしまった。
「なっ、なによこれ!」
「うわぁ、どうやらお嬢様、この門はちょうど戦争中の国の戦闘域に出ちゃったみたいですね。門も閉じてるし引き返すことも出来ないみたいです。」
とりあえずどうすればいいのかしら…これ。目の前で血飛沫をあげながら、倒れていく人を見るのは趣味じゃないのだけど……。
そうね。ちょっと気絶してもらいましょうか。
「ミル、ここから一番近い街はどこ?」
「そうですね、兵士達の鎧や旗を見る限り、ここはキローク王国とエシフェム王国の間なので、ここから北に行けばキローク王国都市、南に行けばエシフェム王国都市かあると思いますよ。」
北、ね。
「じゃあ北に行くわよ。この人達には気絶してもらいましょう。」
「召喚…迅龍」
轟音と共に体が雷で出来た龍が飛び出してきた。
「ここの人達みんな気絶させてちょうだい。邪魔なのよ。」
その言葉を聞くと迅龍は兵士の方へ放電しながら飛び、物凄い速度でバタバタと兵士が倒れていった。
「お嬢様の召喚術はやっぱり凄いですね~」
ミルは何でもないことのようにシャスフィリアを褒めている。
ハッキリ言うと異常である。
迅龍というのは迅雷龍、つまり雷を司る龍なのだが、カミナリ、神鳴りと言って神霊としての位を持った者にしか雷は使えないのである。
神霊が本気で動けばここ一帯が刹那で更地へと変貌するだろう。
「終わったみたいね!迅龍さんは仕事が速いから助かるわぁ~!」
この日、謎の要因により、キローク王国兵士、エシフェム王国兵士共に、戦の記憶が失われ誰もおもいださないという天災に見舞われ、この事でお互いの兵士が助け合いをし、この戦闘で失われた者が多すぎたため、結果この両国は同盟を組み、世界を驚かせたのだがこれはまた別の話である。
その当事者と言えば……
「これで、北に行けますねー。流石がお嬢様です!」
「フフン!これが私のやり方なのよ!」
ミルにおだてられ調子に乗ってるのであった。
こうして、最初から無茶しすぎの2人の旅は始まった!
こうして2人の冒険(暴走)が始まった訳ですね!魔王娘ちゃんはちょっと全てがオーバースペックなので、無茶ばかりしていくようですよ?