四話
俺は朝方の早い時刻に目が覚めた。時計を見たら、まだ五時だ。さて、どうしたものかと考える。頭痛もないし吐き気もない。昨日は飲み過ぎなくてよかったとため息をつく。
そうだ、ルーシーの所へ行こうか。結論が出たのでベッドから出た。タンスから騎士用の制服の下に着るシャツと黒のキュロットを出した。
手早く着替えて黒の革製のブーツを履いた。洗面所に行き、顔を洗ったり歯を磨く。
一通り、おわらせてからタオルで水気を拭き取る。ひげが生えていたのでカミソリを鏡の近くの棚から取り出した。石鹸を泡立てて顔の下半分につける。
カミソリで慎重にひげを剃っていった。鼻の下や頬、口の周りに顎の辺りにカミソリの刃を滑らせていった。しばらくして、きれいに剃れたのでカミソリを水でそそぎ、棚に戻す。泡のついた顔を洗い、また水気を拭き取った。
「よし、できたな」そんなことを呟きながらブラシも取って髪を整えた。準備はできたので洗面所を出てドアに向かう。ノブを回して部屋から竜舍へ向かった。
『…あら、スティ。おはよう、早いわね』
昔と変わらない声と姿でルーシーが迎えてくれる。俺は彼女を見てやっと、安堵できた。「…こちらこそ、おはよう。昨日は一日こちらへ来なくて悪かったな。元気にしていたか?」
『ええ。元気にしていたわよ。昨日はお酒を飲みに行っていたってフィーから聞いたけど』
俺はそれを聞いて頬がひきつった。
「…あいつ、ルーシーにそんなことを言ったのか?」
ルーシーは目を細めて苦笑いの表情になった。
『ええ。そう言っていたわよ。相変わらず、フィーはお調子者よね』
あいつめと言いながらも俺は藁をかき集める熊手を探した。それを取ってきてルーシーの部屋に敷き詰めてある藁を隅に寄せる。
『いつも、お疲れ様。わたしの世話を進んでやってくれるのはスティくらいよ。フィーもそれなりにやっているけど』
「あいつは俺と違って両親が竜騎士ではないけどな。たまたま、俺は両親共に竜騎士だったから試験も受けやすかったがな」
『…そうだったわね。スティのお父さんは竜騎士団の団長さんだもの。今は定年になって引退したけど元気なものだわ』
ルーシーが言うのを聞いて俺は藁を集めながらそうだなと相づちを打つ。部屋の外に出て一輪車を押して持ってくる。中に入ると隅に寄せた藁を入れた。
一輪車にいっぱい入れたら藁の廃棄所まで持っていき、捨てた。少し離れた場所にある新しい藁を入れて部屋に戻る。
熊手で新しい藁をむき出しになった土床にばらまく。それをルーシーは静かに見守っていたのを俺は気づいていなかった。作業に明け暮れた一日を送った。