十二話
あれから、二年が経った。
ルーシーは俺とこのまま結婚……にはならなかった。そう、彼女はどこからか同じ竜族のつがいを見つけたらしい。名をウェンと言うのだとルーシーは言っていた。それはもう幸せそうにだが。こうして俺とルーシーの関係は無くなった--。
俺は二十二歳になった。両親の勧めでお見合いをしてルチアという人間の女性とお付き合いするようになる。ルチアは俺より一歳下の二十一歳で。仕事が忙しくろくに会えなくてもルチアは怒らなかった。竜騎士としてのパートナーはステファンという男竜になる。彼は人間でいうと十八歳くらいの若い竜だ。黄金の鱗と銀の瞳が綺麗な穏やかな奴だった。
『……スティ。ルーシーにはフられたらしいな』
ある日、竜舎の掃除をしていたらステファンに声をかけられた。俺はそうだがと頷いた。
「それがどうかしたか。ステファン」
『ちょっと気になったもんでな。お前だったらルーシーは幸せになれると思っていたんだが』
「でも。ルーシーと俺はやっぱり竜と人間で。あいつには同族の奴と幸せになってもらいたい。俺も人間の恋人を見つけたし。これで良かったんだよ」
『……スティ』
「心配はいらねえから。ステファン。お前に出会えてむしろ良かったよ。同じ男同士だから気が楽だしな」
ステファンはふうと息をつく。やれやれと言わんばかりの表情だ。
『スチュワート。俺はルーシーとの事は仕方ないと思っている。が、まだ気持ちの整理がついてないくらいの事はわかるぞ。こういう時くらい、カラ元気はよせ。愚痴くらいは聞いてやる』
「……ありがとよ」
俺はステファンの言葉に甘えて愚痴を言うことにした。竜舎の近くの建物から椅子を借りてきてステファンの近くに置いて腰掛けた。
「そいで。何を話したらいいんだ?」
『何でも構わん。スチュワートの話したいように話せ』
「……そうか。わかったよ」
俺はその後、ステファンにいろんな事を話した。ルーシーとの出会いからパートナーをやめるまでの間の事をだ。彼女と出会ったのは俺が六歳くらいの時だった。母のシャンティに連れられて竜舎に初めて行った。その時、母のパートナーだったルーベンスという女竜と会った。ルーベンスは俺に竜の言葉をわかるように術をかけてくれる。この後でルーシーを紹介された。
俺の転機とも言えた。ルーシーは明るくて元気のいい性格だ。俺の事を気に入ってくれた。この時から竜騎士になろうと決心して一生懸命に勉学や武術などに精を出したのだった。
そうしてめでたく竜騎士になれた俺はルーシーと共に空を駆けていろんな戦いに身を投じた。六年という短い間だったが。俺は充実した日々を送ったといえるだろう。
「……とまあ、そんなところか。まだ、話し足りないかな」
『構わん。スチュワートの思う存分に話してすっきりしたらいい』
俺はまたルーシーの事を話し続けた。そうする内に夕方になっていた。俺はステファンに「ありがとう」と礼を言って椅子を戻しに建物に向かった。椅子を返した後、フィリップに会いに行く。
「よう。フィー。今日も飲みに行くか?」
「……スティが誘うなんて珍しいな。まあ、いいけど」
「ああ。じゃあ、今から行くとすっか」
「おう。わかった。んじゃ、今日は俺の奢りな」
「……わかった。フィー、あんがとよ」
礼を言うとフィーはにっと笑った。二人してぶどう亭に向かったのだった。




