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十話

俺に抱きついたルーシーは嬉しそうに笑いかけた。

「スティ。告白したんだから答えは?」

「…答えね。俺は女性には興味が持てない。まあ、ルーシーに今、つがいを持たれたら困るが」

「まだ言うのね。いいけど。スティ、竜はね望めば人との間でもできなくはないのよ?」

大胆発言をするルーシーに俺は返答に困る。「ルーシー。そういう事はあんまりはっきり言われても困るんだが」

「あらいいじゃない。あたしの場合、子が生まれたら願ったり叶ったりよ。返事はどうするの?」

ルーシーは詰め寄るような言い方をした。

「…わかったよ。付き合うのは了承する。が、手は出さないからな。あくまでそれは正式に婚姻してからだ」

暗に絶対に手は出さないかもなと含みながら言うとルーシーはじとりと睨んできた。俺は苦笑いする。

「スティ。あたしには女としての魅力がないと言いたいの。これでも、人で言うと二十歳は過ぎているわよ?」

「わかってるよ。ただ、急すぎて頭がついていっていないというか」

「ふふ。

「そうなのね。いずれはあたしがいないといけないようにしてあげるから」

ルーシーは挑戦的に微笑んだ。それに悪寒を感じる俺だった。




あれから、俺がルーシーと恋仲になって半月が過ぎた。未だに彼女には手を繋いだりする以外は触れていない。ルーシーからは抱きついたりキスをしてくる事はあるが。周りからは冷やかされるようになった。特にフィリップからはからかわれる頻度が増えたような気がする。

うんざりしながらもなかなか諦めそうにないルーシーに手を焼く日々を送っていた。

今日もため息をつく俺に妹のシルバーが声をかけてきた。

「あら兄さん。ため息をついてどうしたの。今日は母さんに頼まれてお昼ご飯を持ってきたのに」

シルバーは名前の由来になった銀色の綺麗な髪をハーフアップにしている。お昼ご飯の入ったバスケットを掲げながら俺に笑いかけた。

「シルバーか。何でもないよ。それより、いつもすまないな」

「すまないって何が?」

「…お昼を持ってきてくれたり体調が悪い時には薬を持ってきてくれたろう。お前には心配をかけさせるな」

「そんなに気にする事はないわ。兄さんのことは母さんも心配しているから。お昼を持ってくるくらいしかできなくてこちらこそ悪いわね」

シルバーは苦笑しながら答えた。俺は妹に同じように笑いかけながら肩を軽く叩いた。

「いや、余計な事を言ったな。いつもありがとうな」

「いいのよ。どういたしまして」

昼間の穏やかな日の光がシルバーの髪を照らした。風が吹いたのかその髪が揺れるのに目を細めたのだった。


シルバーが帰った後でバスケットに入っていたサンドイッチやスコーン、クッキーに柑橘水をフィリップや人型になったルーシーの三人で分け合いながら食べた。フィリップは母さんやシルバー特製のサンドイッチやスコーンをうまいと言いながら食べて、終始ご機嫌だった。ルーシーも控えめながらもクッキーやスコーンを食べる。二人とも一人分どころか二人分くらいは胃に納めていた。それを見守りながら俺も柑橘水を飲みながらサンドイッチを食べる。

「本当にシャンティさんは料理がうまいよな」

「ええ。シャンは若い頃から料理が得意だったわ。特にスープやパンとかは上手に作っていたわよ」

「そうか。スコーンもうめえ」

二人して会話しながらもがっついている。シルバーがたくさん作ったからと言っていてくれて助かった。母さんには礼を言わないとな。

「ねえ、スティ。サンドイッチだけじゃなくてクッキーを食べたら?」

「ああ、三枚か四枚くらいは食ったぞ。お前らが食い過ぎなんだよ」

「そんな言い方はちょっとね。まあいいけど。スコーンくらいは食べなさいな」

ルーシーはそう言いながらスコーンを差し出した。仕方なく俺はそれを受け取った。口に運ぶと程よいオレンジの酸味と甘味がふわりと広がる。確かにこれはうまい。俺が黙ってスコーンを飲み込むとルーシーはにっと笑う。

「美味しいでしょ?」

「ああ、うまい。母さんのスコーンはオレンジが入っているから食べやすい」

答えるとルーシーはだよねと満面の笑みを浮かべたのだった。

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