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乙女ゲームの模範生!  作者: 穂兎ここあ
乙女ゲームの模範生
9/30

Lesson9

 次の日、わたしはズル休みをしてた。

 かっこよく決めたつもりだけど、みんなの前であんな啖呵きったんだもん。学校に行ったらわたしの机がなくなってる気がして学校なんて行けなかった。

 お母さんにはお腹が痛いからって伝えてる。仮病を疑われないように昨日の夜中にピンク色の小粒を飲んで、朝にはトイレから何かを煮沸するようなものすごい音を木霊させておいたから、大丈夫。

 小粒の威力が強すぎて結局夕方までトイレにこもって大変だった。これは本当に病欠だ。


「わたしのクラスまで噂になってたよ。あのガリ勉水原伽耶が皆戸翔に逆恨みしたって。ついでにオタクってことも」


 学校帰りお見舞いに来てくれた杏ちゃんがご丁寧に状況を教えてくれた。そりゃそうでしょうね。分かってましたとも。


「明日も休もうかなぁ。絶対机なくなってるもん。いやだぁぁあああ」

「落ち着きなよ、伽耶」


 枕に頭を打ち付けるわたしを杏ちゃんが困った様子で止めてくれる。いいもん、わたしには杏ちゃんがいる。


「机は無くなってないわよ。そこは素直に守ってるみたいだから」

「だぁれぇがぁぁぁあああ! 隼人様が守ってくれるのぉぉぉおおお! とうとう画面から出てきてくれるのぉぉおおおお」

「うるさいよ。本当学校でのクールっぷりはどうやって保ってるのよ」


 杏ちゃんは困り顔だ。

 だって隼人様はおとなしい女の子が好きなんだから。隼人様のためなら演じるよ。そうして演じてたら現実に隼人様みたいな男子が現れてくれるかもしれないから。


「いるじゃない。カケルくんが」

「だーかーらー! あいつは違うの! 演技じゃダメなの!」

「伽耶の【おとなしい女の子】も演技じゃない」


 言われてハッとした。

 翔に演技だどうだって言ってきたけど、わたしもそう。もし本物の隼人様が目の前に現れたとしても、わたしはニセモノ。本物になろうと頑張ってみても、ニセモノはニセモノだ。


「演技演技って言われたら嫌でしょ。カケルくんは伽耶のオタクをバカにしても、伽耶の学校での姿を演技のくせに、なんてバカにはしないでしょ?」


 そうだ。翔はわたしが学校で作ってることを知ってるのに、何も言わなかった。誰にもバラそうともしなくて。おとなしいふりも、全部バカにしなかった。


「伽耶も、たまにはカケルくんの演技褒めるくらいになれば……カケルくんも伽耶の前で優しくしてくれるんじゃない?」


 本当に優しい翔なんて、もう思い出せない。昔は優しかったって、その事実は覚えてる。どんなふうに優しかったかは全然思い出せないけど。

 乙女ゲーム趣味がばれて、翔が隼人様の真似してるって分かって、それを翔に聞いたあの日から――。


「じゃ、わたしはもう帰るね。明日はちゃんと学校に来なよ」


 考え込むわたしに杏ちゃんは優しくそう言って部屋を出て行く。パタン、と部屋の扉が閉まって、そしたら部屋の向こう側で杏ちゃんの驚く声が響いた。


「わ……。カケルくん、伽耶のお見舞い?」


 え……。杏ちゃん、今なんとおっしゃいました?


「あ、香川さん。……伽耶、今起きてる?」


 間違いなく、皆戸翔の声だ。

 もしかしてお見舞い? まさかそんなわけない。じゃあ昨日のお礼でも言いに来た? いやいやまさか。それなら昨日の夜に来るはずだ。翔だもん。どうせ昨日のことなんかすっかり忘れてさも当然みたいにズル休みをバカにするんだ。くそっ、昨日助けてあげたのに。

 とりあえず隼人様の抱き枕は隠さなきゃ。これを人質にとられたらおしまいだ。敵の武将を本丸に迎え入れる準備ができていない。ここで返り討ちにするんだ、アァァァァ無性に武将系乙女ゲームしたくなったじゃないかぁぁぁ! やめろぉぉぉ、今じゃない今じゃないんだってば!!


「起きてるよ。わたし帰るから後はよろしくね」


 杏ちゃぁぁああああぁあん! なんでそんなこと言っちゃうの。いや、元気だけど。元気なんだけども。うわわわっ、ドアノブが回った、あぁぁあぁ、逃げなきゃ。どこへ、どこへ逃げればいいの! Where are you going? ウェアーウィーアーあぁぁーいしーてーるぅぅってこれはときマスのファンディスクのOPだからぁぁぁああああ! 歌ってる場合じゃない!


「……お前、何してんの」


 結局逃げ場がなくて布団にくるまったおにぎりみたいなわたしを、翔が呆れた顔で見てた。




すいません。次で最終話の予定が、ちょっと話長くなってあと3話くらい続きます。一気に最終話まで更新すると思うので、最新話から見る際は話数気をつけてください!

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