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乙女ゲームの模範生!  作者: 穂兎ここあ
乙女ゲームの受難生
20/30

Passion8

 来るな来るな! ベッドに乗るな降りろ!

 わたしはジタバタと暴れるけど翔は素早くわたしから隼人様を取り上げた。


「来るなーーーっ! 不潔不潔不潔! 隼人様を返せぇぇえええ!」


 翔は隼人様を取り上げたままわたしのことをベッドに押さえつけた。やめろやめろ、触るな変態!


「不潔ってなんだよ!」

「知らないの?! 口の中なんて菌だらけなんだからな! キスしたら何億個も菌が交換されるんだから!」

「な……っ! キスをそんなふうに捉えるやつがいるかバカ! つかお前だって抱き枕にキスしてただろうが! 本当何してるんだよ! 抱き枕にするくらいなら俺にしろ!」

「は、はぁぁぁ?! 嫌よ! 何言ってんの変態! 本当やだ! 最低最悪不潔!」

「お前俺のこと不潔不潔言うけどな! 隼人様だって不潔だろうが! ヒロインと何回キスしてると思ってんだよ!」

「本編では5回、ファンディスク【恋の桜シェイキング】では2回で【恋のサマーシーサイド】では」

「答えろって言ったんじゃねーよ! あぁぁあもう本当救いようのないオタク女! 隼人様のキスシーン見てキモい叫び声あげたの誰だよ!」

「隼人様は無菌だもん! 菌がつくわけないだろ、バーカ!」

「バカはお前だ! いいから人の話聞けよ!」


 翔はそう言ってわたしの両手をベッドに押さえつける。や、やめろ、なんだこの恥ずかしい態勢は! お願いだから離してよ。いやだいやだ、翔なんか、翔なんか!


「澤谷とは、何もないから」

「キスしてたじゃん!」

「だから、それは」

「言い訳なんかきふぉひにごにょにゅふぉ」


 翔が片方の手を離してわたしの口を塞いだ。おかげでわたしは文句を言いたいのにうまく喋れない。ガムテープよりはマシだけど、翔の言い訳なんか聞きたくないんだから! 邪魔させろ!


「お前も知ってると思うけど澤谷にクリスマスパーティー誘われて」

「ふぉごにょにゅ……っ!」


 だから行けって言ってるだろうが! って叫びたいのに叫べない。ちくしょう、口開いたら翔の手を舐めてるみたいで気持ち悪いじゃないか! 喋りたいのに喋れない。


「断って、帰ろうとしたら……」

「ふんぐっ、うっぐくぐっ!」


 そしたら澤谷さんがキスしたって? 澤谷さんの好意なんて丸分かりだった。翔は鈍感男じゃない。むしろ勘違い野郎なんだから澤谷さんの気持ちくらい知ってたはずだ。知ってたのに隼人様の真似して思わせぶりな態度をとってたのは翔じゃん。澤谷さんにキスされるのが分からなかったわけない。

 わたしが翔の胸を叩こうとしたら、翔がわたしの口を解放してまた手をベッドに縫い付けた。


「ぷはっ、は、離せバカ!」

「離さない。お前が機嫌直すまでは離さない」

「別に機嫌なんて悪くない!」

「悪いじゃん。……つか本当なんで怒ってんの。俺のこと興味ないんだろ? それなのに澤谷と俺がキスしたら嫌なの?」


 何よ何よ。翔のくせに冷静な口調で。なんでそんな真面目な顔するのよ。やめてよ。本当離せ、バカ。


「あんたなんか……嫌い」

「伽耶……お前いい加減に」

「うるさいうるさい! 翔なんか嫌い! どこへでも行けばいいんだ! 知らない!」


 わたしは渾身の力を振り絞る。それでも翔の力には敵わなくて、だから反射的に足を振り上げてしまった。


「……うっっっっくぅぅぅうっ!」


 翔の力が緩んで、わたしは翔から解放される。でも翔は手を太股に挟んでベッドに座り込んだまま唸ってる。やばい、これはやばいことをした。いや、本当に。意図的に翔のカケルを狙ったんじゃないです。それは本当に謝ります。違います。いや、あの、その……やばい。翔が太股に挟んでた片方の手を振り上げて、そのまま振り下ろ……え、ちょ、わ、その下には隼人様……隼人様がぁぁぁあ! 翔が隼人様にボディーブローしやがったぁぁああ!


「バカ女! もうほんっっとお前なんか知らねーよ!」


 完全にキレた翔はベッドから立ち上がって隼人様にもう一回ボディーブロー(やめろぉぉぉお!)をして部屋の扉を荒々しく開け放った。


「え……あ、の……かけ」

「後悔しても遅いからな! あぁぁぁぁあ、もう澤谷と付き合ってやる!」


 翔は部屋を出て行き、扉をバタンと大きな音を立てて閉めた。

 え……やだ、嘘。本当に、本当に澤谷さんと付き合うの? 今回はちょっとやり過ぎたなって思ったよ。でもそれだっていつものことで……いや、それにしてもやり過ぎたよ。分かってる。意地も張りすぎて、いやだいやだ、翔待って。

 わたしは翔を追いかけて、扉のドアノブを握――。


「なっっっっんで追いかけてこないんだよ! 追いかけてこいよ! ドアの外で待ってんだろ!」


 ゴツッと痛い音が響いた。本日2度目、わたしの額に扉の角が食い込む。もう何よこれ。いい加減額に縦線入るんじゃないの。もうすごく痛い。もうほんと何よ何よ。あんたも痛いかもしれないけどあんたのせいでわたしの額は割れる寸前だぞ! ケツデコだぞ!


「伽耶……お前、追いかけに?」

「うぅぅぅぅっ」


 涙が出てくる。痛くて、痛すぎて、涙が止まらない。


「か、伽耶? お前……な、泣くなよ。今のは別に……」

「痛い! 痛い痛い痛い! 全部全部翔のせいだ! バカケル、バカ、アホ、最低最悪! アホアホアホアホ!」


 わたしは部屋に戻って来ようとした翔を押し出して、部屋の扉をバタンと閉めた。

 あぁもう、涙が止まらない。全部翔のせいだ。額が痛い。痛くて痛くて、涙が全然止まらない。

次回:8/2.19時更新

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