表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの模範生!  作者: 穂兎ここあ
乙女ゲームの模範生
11/30

Lesson11

 え……待って、今……え?


「ごめ、何……」

「そうだよって言ったんだ! 耳まで悪くなるなよ! 視力悪くても聴力いいだろ、バカ! それふまえて自分のひどい言動思い返せよ!」


 聴力はいいけど、いやいや、なんでそんなこと知ってるの。え、ちょっと待って本当に? 分かった、こんなこと言って冗談でしたーって言うんだろ。分かってる、分かってるんだから。


「言っとくけど冗談じゃねーからな。お前この期に及んで、まだ信じねーのかよ! どうなってんだよ、その頭! 数式と隼人様しか入ってねーんじゃねーの?!」

「お、おおお、怒らないでよ! 信じれるかバカ! バカケル!」


 わたしは翔から飛びのいて、ファイティングポーズをとる。翔は体を起こしてカーペットに座り込んで、またまた大きなため息をついて頭を抱えた。


「ああもう、くっそ。こんなふうに言うつもりじゃなかったのに。バカ、ほんとバカ! ふざけんな、バーカバーカ!」

「ば、バカにバカって言われたくないんだから! な、何言ってんのほんと。わたしのためって、あんた……あんた、わたしの前じゃ隼人様の真似しないじゃない! ただの意地悪男子じゃない! ポ◯モンの短パン小僧みたいにいつも突然現れてこりずにケンカふっかけてくるじゃない!」

「誰が短パン小僧だよ! ふざけんな! だから言ってるだろ! 自分の言動振り返ろって! お前俺が中2のとき隼人様の真似して過ごしたらなんて言ったか覚えてるか?!」


 ちゃんと覚えてる。だって翔が豹変した瞬間なんだから。忘れるわけない。わたしの記憶力は少なくともあんたよりはいいんだから!


「覚えてますーっ! 最近変わったね。隼人様みたいって、ちゃーんと言いましたーっ!」

「ほら全然覚えてねーよ! お前すんごい引いた顔で言ったんだぞ! 虫けら見るような目で俺を見て、俺がどれだけ傷ついたと思ってんだよ!」


 か、顔? どんな顔してたっけ。とりあえず翔が隼人様の真似してるのかなって少し驚いてて、でも違ったら恥ずかしいから遠慮がちに聞いて……誤解だ。引いてたんじゃない。


「違う! 変なこと聞いてるかなって思ったから遠慮がちに……」

「あれが遠慮顔?! お前それやばいって! すげー顔だったぞ、あんな遠慮顔見たことねーよ! 何、え、本気で言ってんのか?! 苦し紛れに嘘つくんじゃねーよ!」

「はぁ?! ひっどい! 最低!! やっぱり最低じゃん! わたしのためなわけない!」

「なんで信じないんだよ! ちょ、お前、いったん黙れ! ガムテープどこだ!」

「え、何する気……」


 翔がわたしの棚を漁ってガムテープを探してる。やめろ、やめろ。何を始めるんだ。今ガムテープ必要あるか、わたしに必要性を説明しろ、今すぐ。ジャストナウ! ちょ、ちょ、ちょ、何してんの! その引き出しにはときマスのラバーストラップが……ひ、ぁぁあああああっ、投げるなぁぁあ! 全部拾ってやる! 拾ってやるからな!


「あった!」

「隼人様ぁぁあ……っ、え、やだ、来るな! 何、やめ……ぎゃああぁあああ、う、ぐっ」


 翔がわたしの部屋から勝手に見つけ出したガムテープをわたしの口に貼る。ちょっと待てーっ。え、何枚貼るの?! 5枚くらいちぎって重ね貼り、しかも角度変えて頑丈に貼ってる。これ剥がす時痛いよね、痛いやつ。え、本当になんなのこの人。やだこわい。


「ふぅ、ぐ、うっぐ、むむむむむぎゅむご」


 翔に再び腕を掴まれて、わたしは翔と向かい合って立ってる。ガムテープを剥がしたいのに剥がせない。どうせなら腕を巻くとかにしろよ、そっちのほうが乙女ゲームっぽいだろ。もしかしたらときめくかもしれないだろ。いや、やっぱいいです。翔にはしてほしくないです。


「はぁ、静かになった。よく聞けよ」


 ずっと聞いてるよ。聞いてるんだから。


「お前は俺が隼人様の真似してるって気づいて、すごく引いて……」

「むぐ、ぉぉおご、ぐぐっう、っご!」


 引いてないと伝えたくて頑張るのだけど、ガムテープに阻まれて全然声が出せない。


「なんでガムテープ貼ってんのに話そうとすんの。いいから聞けよ。お前は引いて……」

「ぐふぉっほぉっほっ!」

「引いてたんだっつの! あぁ、もうお願いだからちゃんと聞けよ!」


 翔の顔は真っ赤で、そんなに怒らなくていいじゃんってガムテープ越しに言いたくなる。でもやっぱりそう伝えることもできなくて、翔のほうこそ人の話聞いてよ。


「お前に好かれたくてときマスやって、隼人様の真似して……今思えば本当健気だったよな、俺」


 好かれたくて……って、そこからわたしは意味わからないんだよ。早く続きを話してよ。ああ、もう、しみじみと自分を褒めるなよ。


「なのにお前には普通にバレて、それだけでも恥ずかしいのにお前すごく引いてるし。お前のためにやってんのに、もう恥ずかしすぎて……だからもう開き直るしかないだろ」


 開き直って、豹変したというのか。なんだそれ、どこの少女漫画のストーリーだ教えろ。いや、どこのストーリーでも口にガムテープ貼り付けてこんなシーンありえない。夢が壊れる。いやだいやだ、本当今すぐ剥がして。


「それでも、他のやつの前で隼人様の真似してたら、お前俺のことかっこいいとか思うのかなって、少しは俺のこと考えるのかなって思ったのに……いや、考えてるんだろうけど、文句しか言わねーじゃん、ほんと何なんだよ! あぁぁぁあ、腹立ってきた!」


 やばい、殺される。わたしはジタバタともがいてみるけど、やっぱり無駄だった。翔に力で敵わない。


「回りくどい説明なんかさせんなよ! どうでもいいだろ! こんなの本当! 俺は……俺はお前が好きなんだ!」


 そして翔の顔が目の前に……目の前に? キス……されてる? ガムテープ越しって、キスにカウントされるの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ