interlude12
(実は、ずっと気になってて)
(でも、見れないものが幾つかある)
(どうやら、あんたが教えたくないと思ってることは)
(オレでは見ることが出来ないらしい)
(チャンネルを、選んで)
(カウントダウンしても――)
(――ノイズ音)
……遠ざかる軍船を、為すすべもなく見送る。
奴らは、俺を認識していた。
島の構造――
俺の家――
なぜ、人間がそれを知る?
綿密に練られた襲撃計画?
重い瞼を必死に引き上げるが。
貫かれた剣で、壁に張り付けられて。
意識が保てるのは、多分、後僅か。
月の出ない昼間――
泉の障壁――
なぜ、人間が――
(――ノイズ音)
「本当に行っちゃうの……」
島に残った数少ない同胞の声を背に受けて。
帳面を片手に転移の魔法陣を書き殴る。
「行くよ。拐われた同胞を放ってはおけない」
「だけど……行けば、サクヤだって危険よ」
優しい声に裏はない。
心底から自分を心配する声。
だけど。
俺自身が、俺を許せない。
同胞を守れず。
穢らわしい人間に奪われた。
同胞達はこの一刻も苦しみの中にある。
完成した魔法陣をもう一度確認してから。
身体を起こして、後ろを振り向けば。
義姉の親友が長い耳を伏せてこちらを見ていた。
「俺は行く。この島を直接守れないのは辛いけど……」
「障壁が戻ったから大丈夫。でも、私が心配してるのはそんなことじゃないのよ」
「分かってる、ユナ。――ありがとう」
その身体を抱き寄せて、短い挨拶を交わす。
「泉の水が、いつも、そなたとありますように」
「泉よ、我らが姫巫女を守りたまえ……」
瞳を閉じて、額を軽く合わせた。
名残惜しそうな彼女の身体を軽く押して。
魔法陣から遠ざける。
「島に残るユナにも色々迷惑をかけるけど――」
「そんなのは大したことない。お願い、無事で帰ってきて……」
泣き出しそうなその表情に小さく笑いかけて。
俺は呪文を唱え始める。
「其は天空を統べる夜の女王――」
(――ノイズ音)
(――ノイズ音)
(――ノイズ音)
(ほら、かなり無理に入り込んでも)
(この程度しか――共有出来ない)
(あんたが、オレを入れてくれない)
(いつか、オレとも共有してくれるのか)
(それとも、オレが――)
(――抵抗を物ともせずに、共有出来るようになるか――)
2015/10/02 初回投稿
2017/02/12 サブタイトルの番号修正