表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奴隷商人は嘘をつかない  作者: 狼子 由
第9章 You'll See
151/184

19 うわあ、って言う

【前回までのあらすじ】蔵の国の問題は、うまいことスバルがおさめてくれそうで安心……したけど、結局サクヤさんとオレの問題は解決してません。折角両想いになったのに、何であんたそんなにオレを避けるの? 「シタクナル」からって……ちょっと!

 女王の向こうからオレを上目遣いに見上げる姿は、もう――もう、何だろう。

 何なんだ。

 ムカつくけど頼りなさげで、こうして正面から見られるのが久しぶりでちょっと嬉しくて、何だかオレしか見えてないような顔に見えて……心の中色々渦巻き過ぎて、何て表現すれば良いか分からない。


 あえて一言でまとめるとしたら。

 ――もう、可愛くて仕方ない。


 間にいる女王が自分の頭越しに見つめ合ったままのオレ達の注目を集めるため、こほん、とわざとらしい咳をした。


「んん……すまなかったな、少年よ。私が余計なことを言ったようなのだ」

「いや、だからさ……その余計なことって何だよ?」

「ちょ……や……余計なことじゃない……んだ、けど……」


 ぼそぼそと呟きながらサクヤの顔がまた赤くなっていく。

 オレの視線から隠れるように女王の背中に身を寄せたけど、そもそもサクヤより女王の方が小っちゃい。何の役にも立ってない。

 赤くなってるあんたの首筋がはっきり見えてる。

 そんな恥ずかしそうな顔して、ちらちらとオレを見るのが……やっぱ可愛い。


 女王が再び、こほん、と咳をした。

 呆れたような表情は、オレに向けてかサクヤに向けてか。


「君ら私がここにいること忘れてないか? だからな、私が巫女どのに伝えたのはつまり――」

「え!? ま、待って。女王、アレをカイにも教えるつもりか?」


 さっきまで隠れていたはずなのに、サクヤは慌てて女王の前に出てきて引き留めにかかった。


「ん、教えた方が良いのじゃないか? だってそれが原因で巫女どのは――」

「――違……くはないけど、でも……」


 何か2人でぐちゃぐちゃ言い合ってるが、その問題が解決しない限り、サクヤはオレから逃げ続けるっていうことのようだ。

 だったら、もう何がどうでも良いから早く教えてくれ!


「ねえ、何なの?」


 我慢の限界で声を上げたら、びくりと震えたサクヤが潤んだ瞳で見上げてきた。

 うわあ! あんたそんな顔出来るんだ、初めて見たよ!

 そんな……この世にオレしか頼るものがないみたいな。

 その顔のまま、サクヤは女王の肩にしがみついてる。


「だっ……だから……そもそもはそんな深い意味なくて……ただ、たまたまそんな話になって……別に最初からずっと聞きたくて興味津々で聞いたとかそういう訳じゃなくて……」

「何だよ?」


 この人がそう言うなら事実そうなんだろうけど、何か延々と言い訳してるようにしか聞こえない。

 近付いて女王の頭越しにサクヤの眼を覗き込むと、赤い頬がますます赤くなった。


「だから……その……だから俺は別に……」


 うじうじするサクヤの言葉を遮るように、ごっほん、とこれまでで一番でかい咳の音がオレの腹の辺りから聞こえた。

 はっと見下ろすと、オレとサクヤに挟まれた女王が苛立ち紛れにしっぽを振り回しながらぐるぐる唸っている。


「もう! 巫女どのよ、これ以上は私は付き合いきれない! ――つまりな、少年。第二誓約の限界とは何か、という話をしてたのだ」

「はぁ? 第二誓約の限界って……?」


 姫巫女の三つの誓約。

 嘘をつかないこと。

 純潔を守ること。

 同胞を愛すること。

 第二誓約は二番目の純潔を誓うもの。ならば、その限界ってコトは……?


 女王は牙を剥いたまま唇を引き上げた。

 ぐるるぅ……と喉を鳴らして、あたふたするサクヤを片手で制しながら囁く。


「さて君に問題を出そう。第二誓約があるのに、私はどうやって我がハレムの姫君達を可愛がっているのだと思う?」


 どうやって可愛がってるかって? そんな――

 えっと……その具体的なことを想像しかけて、顔が熱くなった。

 何か答えようとして口を開いたけど、すぐにそれは口に出すに値しない単語だと気付いて唇を引き結ぶ。

 そんなこと何度か繰り返してたら、パクパク口を開けては閉じる魚みたいな感じになってるのを自覚した。

 情けない気持ちで、思い付いた中で一番マシなコトを尋ねてみる。


「あの……えっと、第二誓約があってもエロいことは出来る――ってコト?」


 実際に言ってみると、全然マシじゃなかった!

 何だこれ、自分で言ってもヒドい質問だと思う。しかも何か……変に期待してるみたいな声になった気がする。


 ああ、ノゾミが頭の中にいなくて良かった!

 今オレが口に出さずに考えてるあれやこれやを誰かに覗かれたりしたら……間違いなく恥ずかしさで死ねると思う。

 そして、そんなオレの気持ちを知ってか知らずか。

 ぶん、と大きくしっぽを振った女王は、きっぱりした声で即答した。


「出来る」


 ……うわあ。

 うわあ!?

 ――うわあ! 出来るんだ!?

 何? 何をどうしてどこまでしていいの!?

 ちゅーは問題なかったっぽいけど、もしその先が出来るなら一体どんな……!?


 一気に頭が高速回転を始めたオレを見て、女王は呆れたようにしっぽを垂らしながら息を吐いた。


「……気持ちは分からんでもないが、少年よ……ちょっと鼻血を拭け」

「鼻血……うわあ!?」


 顔を擦ったら手のひらにべっとり血が付いてびびった。

 慌てたようにサクヤがポケットから取り出したハンカチでオレの顔を拭ってくれる。されるがままにその手の感触を受けながら、オレは女王を押し退けて身体を近づけ、逃げられないようにサクヤの手を取った。

 そうと聞いたら早く教えて欲しい。


「おい、少年!」

「うるさい」


 押し退けられた女王が文句言ってるけど、無視。

 サクヤが怯えたように足を退く。


「か、カイ……!」

「……出来るんだ」


 退いた分だけオレが踏み出せば、結局お互いの距離は変わらない。

 サクヤの手から血まみれのハンカチが落ちる。


「カイ! 止め……ちょっと、お前……」

「出来るんだよな、オレ達」

「待て、お前目が据わってるっ!」


 悲鳴みたいに響く声も無視して、無理やり抱き寄せた。

 その耳元に唇を近付けると、腕の中の小さな肩がびくん、と震える。

 「おーい、その辺で止めた方が良いんじゃないか?」と横から幼い声がするけど、これも無視。


「……教えてくれよ。何が出来るの? どうすれば良いの? あんたが男の今なら大丈夫ってこと?」

「ちが……そうじゃない! 止めろバカ! お前、こないだ『そういうこと誰ともしない』って言ったじゃないか!」

「言ったよ、言ったけどな! 良いか? 『そういうこと』っていうのは、あんたに誓約を破らせるようなことの全てを指すんだよ! だから誓約の範囲内で何か出来るんなら――あの、例えばおっぱいとか触っても良いの? どんくらいの強さで? どんくらいの時間なら揉んでてもいいの!?」


 オレの真横に押し出されてた女王が「うわあ……」ってものすごい憐れむような声を出してたけど、もう完全に無視。知るもんか。

 オレに身体を掴まれて後ろに下がれないサクヤは、背中を仰け反らせて離れようとしてるけど、伸し掛かるようにしてオレも距離を詰める。

 はあはあと、自分の息が上がってるのを自覚した。

 息を吹きかけられる度にサクヤは身を捩ってる。


「頼む、待って! やだ……これ以上近づくな!」

「何言ってんだよ! あんただって『シタクナル』って言ったじゃないか! したいんだろ、オレと。何が出来るのか教えてくれよ、全部片っ端からガンガン手抜かりなく1つ残らずオレがあんたにしたげるから――」


 問い詰める言葉に、ひぅ、と息を吸い込んだサクヤが、一瞬後に顔色を変えてオレを見上げる。

 睨み付けるようなキツい視線を受けて、ようやく本気で嫌がられてることに気付いた。


「――お前なんかに、どれもこれも許さない! バカ!」


 ガン、と思い切り脛を蹴られた。

 痛みの余りに手を離してしゃがみ込んだところで、頭上から息を呑む音が聞こえる。


「……あ……っ? 今……俺、何て言った……」


 呆然としたようなその声からすると、どうやらさっきの言葉は本気じゃなくて、あくまで勢いで口から漏れたらしい。

 だけど。

 姫巫女の第一誓約は「嘘をつかない」――


「巫女どのは今、『お前なんかに許さない』と言ったな」


 呆れたような女王の声が横から響いてきた。

 しゃがみこんだオレのちょっと上で、女王が腕を組んでサクヤを見上げている。

 下からオレも見上げると、目が合ったサクヤが泣きそうな顔で見下ろしてた。


「カイ……ご、ごめん……」


 謝られたことで、ようやく実感した。

 ちょっとすぐには信じたくない気持ち。

 つまり、第二誓約的にはOKだったはずのあれやこれやが……今の言葉で第一誓約に引っかかることになって、全部まとめてアウトになった、なんて。


 目の前にぶら下げられたニンジンを指先掠めて取り上げられたような思いで、反射的に文句を言いたくなったけど。

 口を開いたところで、考え直して言葉をかみ殺した。


 今のは、確かにサクヤの失言が悪いんだけど。

 何でそんなこと言うんだバカ、って思うけど。

 多分、オレもやり過ぎたんだ。急ぎすぎって言うか……。


 それに。

 オレは決めたんだ。

 いつだってオレはサクヤの側に立ってやるって。


 サクヤがいつもどれだけ言葉を紡ぐのに気を付けてるか、知ってる。

 それでも、生きモノだからそうは出来ないことだってたまにはあって、そんな時もしかしたら他のヒトはこの人を責めるかも知れない。

 だけどオレだけはこの人を責めたりしないでいようって。

 どんなに気を付けてても、咄嗟のミスや間違いはきっと誰にだってあることだから。

 そういうことでは責めたくないって。


 ぱふっ、と女王が振ったしっぽがオレの背中を叩く。


「私は止めておけ、と言ったぞ」


 女王の苦虫を噛み潰したような声を聞いて、オレは埃をはたき落としながら立ち上がった。

 そう、女王は止めた。

 サクヤもただ「待て」と言ってたんだ、最初は。

 思わず拒絶の言葉を引き出すほどに、無理やり迫ったのはオレだ……。


「いや……オレこそ、あんたがこんなに嫌がるなんて思ってなくて」

「違うんだ。嫌だった訳じゃなくて、お前が――」

「巫女どのは歳に見合わず色事に疎いからなぁ。性急過ぎて下手を打ったな、少年よ」


 その言葉の意味は良く分かったけど、手に入るはずのものが失われたことへの絶望が大き過ぎて、すぐには返事が出来なかった。

 その沈黙をどう取ったのか、サクヤが目元を両手で隠しながら囁く。


「お前のせいじゃない。口を滑らせたのは俺だ、ごめん。今更もう謝っても仕方ないけど……もし、お前がこれで俺を……」


 その言葉を、最後まで言わせるワケにはいかなかった。

 誓約とは関係ない。

 ただ絶対的に否定する為に。


「待って、オレもごめん。あんたの気持ち聞かずに進めようとしてた。大丈夫、オレ別にあんたと一緒にいれれば、そういうことしなくても良いんだ、全然」


 顔を覗き込みながら笑いかけると、ゆっくりとサクヤの手が外れて、その下から恐る恐るオレを見上げる青い瞳がのぞく。

 オレの言葉を聞いて、安堵したように唇が緩んだ。


 その顔を見ながら。

 オレの脳内でアラームが響く。


 ――嘘だ。

 今の、オレの言葉。

 そういうことしなくても良いなんて、完全に嘘。

 嘘をつかないこの人に対して、オレが嘘をつくことになるなんて――


「本当に……お前は、良いのか?」


 尋ねてくる瞳が期待と不安に満ちている。

 その眼の色を消したくて、オレはもう反射的に返す。


「良いんだ。気にならないよ、そんなこと……」

「……良かった」


 嘘だ嘘だ嘘だ。

 だけど、こう言わなきゃあんたとは一緒にいれない。

 だって触れたいって言えば、あんたを責めることになる。


 抱き寄せようと手を伸ばしたところで、女王がオレの心を見透かしたように溜息をついた。

 その息の音で。そんな小さな音でオレの手は止まってしまって、目の前のサクヤの肩に触れることが出来ない。


 固まってるオレを不思議そうに見上げたサクヤが静かに擦り寄って、そのまま軽く唇を重ねてきた。

 あれ? ――と思ってる間に、唇が離れて。


「……キスは今までにもしてたから、お前に許さない『どれもこれも』に入ってない」


 ちょっとだけ切なそうに笑ってから、踵を返した。


「移転について大体は片付いたから、そろそろ一度青葉の国に戻ろう。エイジ達やナチルに声をかけてくる」

「……うん、分かった」

「じゃ、後で」


 オレが答えを返すと、サクヤは手を振って集落の方へ向かっていった。

 完全にその後ろ姿が消えてから、残されたオレに女王が呆れた声を投げかける。


「何をやってるんだ、君は」

「……責めるなよ。オレだって青少年だぞ? ちょっとくらいそういうこと考えたっておかしくないだろ」

「性少年だなぁ。さっきの勢い、さすがの私もちょっと恐かった」

「悪かったな……」


 ますます凹んで、オレはもう頭を抱えてしゃがみ込むしかない。


「ああ、もう……あそこでミスらなきゃ、色々出来たはずだったのに……」

「全くだ。若さというのは恐ろしい」


 くくっと笑う女王に対する怒りよりも失望の方が大きすぎて、もう立ち上がりたくない。

 しゃがんで溜息をつき続けるオレの背中に、どしり、と重みが加わった。


「なかなか座り心地の良い椅子じゃないか。この椅子を用意してくれた代金として、君に良いことを教えてあげよう」


 どうやら背中に乗ってるのは女王らしい。

 小さな尻がぐりぐりとオレの背中を押してるけど、ロリコン属性がない上にやる気というものの一切を失ったオレは、反応する気も起きない。

 動かないオレの背中にもたれ掛かるようにどさりと身体を投げ出した女王が、オレの首元でぼそりと囁く。


「……巫女どののさっきの言葉、思い返して見ろ。まだ君は全ての可能性を失った訳ではないぞ」


 何を言ってるんだ、この人は。

 サクヤがさっき言った言葉なんて、今更思い返しても――

 女王がオレの上でくつくつ笑う振動が、背中越しに伝わってくる。


「『お前なんかにどれもこれも許さない』――つまり、巫女どのの許しなしに進めるのは誓約の範囲内だな」

「な――それっ……!?」

「私だったらどうするかなぁ。縛って繋いで自分では動けないようにして……うふふふふ……もがく姿も美しかろうなぁ……」

「!? あ、あんた……!」


 ……変態だ。

 ナチルが良く口に出すような煽り混じりの言葉じゃない。

 オレは今、この獣人の女王に、心の底から『変態』という言葉を送る。

 だってこの人もサクヤと一緒で嘘ついたり出来ないんだぜ。この人のこの言葉、全部本当に本心なんだから。


「さて、そうなると第二誓約の限界が真に問題となってくる訳だがね……」


 ころん、とオレの上で寝返りをうって、ぺったりと背中にひっついてきた。

 凹凸の少ない子どもの体温が、オレの真上で呼吸している。


「……教えて欲しかろう?」


 楽しそうに、くくっ、と笑われて。

 オレは。


「――ふざけんな! ぜっっったい、あんたからは聞かないからな!」


 思いっきり自分の背中から女王をふるい落とした。


 いいか、良く考えろ!

 そもそもサクヤがオレをあんなヘンな避け方してたのは、女王から色々聞かされたからだ。

 自分でも「私のせいだ」とは言ってたが……多分、本当に女王のせいに違いない。

 よっぽどヘンな説明の仕方したんだろう。あんな、オレの顔見るだけで真っ赤になっちゃうような。

 逆に言えば誓約の範囲内でそれだけのことが出来るってことかもしんないけど、そんなヘンな言い方されたからこそ、オレに対してあんなに怯えてたんだよ、サクヤは。


 それにオレだって。

 ここでオレが女王からまた知識を得たら、きっと……さっきみたいに、サクヤを押さえつけて無理やり……無理やり――うわあ!

 熱くなった顔を誤魔化すようにごしごし擦ってたら、振り落とされた女王が地面に座り込んで楽しそうに見上げてきた。


「ま、君らにはまだ早いってことかもな。聞きたくなったらいつでも来るが良い。特別に少年には、交換条件付きで教えてやろう」

「交換条件?」

「実地でなら教えてやる、ということだよ」


 小さな赤い舌がちろり、と舌なめずりする。

 実地――の意味を理解して、オレは即座に反応した。


「いらん。無理。あんたとは無理!」

「君な……巫女どのの友でなければ、この場でこのツメの餌食にしとるぞ」


 ぐるるぅ、と唸る本気さに、慌ててもう一度首を振る。


「や、違くて……その、恐れ多くて!」

「ふむ、然もありなん」


 あっさり納得して唸り声が止んだので、ほっと胸を撫で下ろした。


「しかし、それではどうするのかな? 巫女どのから聞き出すか? 彼女はあの調子で……しかも、君は彼女の許しを得ないでソレ(・・)を実行せねばならんのだぞ」

「そこは、何かこう雑談の時に聞き出せば良いだろ。しないってだけで口に出さないとは言ってないんだから……」

「雑談の時に閨の話を持ち出すのか? ……うわあ、ひくわ」

「待て! あんたにだけは言われたくない!」


 ひくわ、とか。

 オレがあんたにひくわ!

 女王はオレの答えをさして気にしない様子でくすくす笑う。


「ま、そういうことならお手並み拝見、というところか。青葉の国に戻ったら頑張れよ、性少年」

「おう、見てろよ! 今にオレは――」


 もうちょいオレが精神的に大人になって、余裕持ってサクヤさんを口説けるようになれば、きっと緊張を解きほぐしながらあれこれ話したり出来るようになるはずだ。

 そうしたら、今度こそきっと――


「うん。決意はご立派なようだが……まずは、鼻血拭くと良いぞ」

「――え? ……うわあ!?」


 呆れた女王の声を聞いて、オレは慌ててまた垂れ始めてきてた血を拭った。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


 青葉の国に戻れば、今度こそ継承戦に向けて準備しなきゃ。

 ヒデトのことだって解決してないし、油断は出来ない。


 そんな山積みの問題に比べれば、第二誓約のことはたしてオレはエロいことできるかなんて、もしかしたら取るに足らないことかも知れないけど。


 人生の楽しみって、そういうとこから始まるんじゃないの?

 人を押し退けてまで幸せになろうとは思わないけど、人の為に自分の幸せ全て捧げるなんてのも、何のための人生かと思う。

 自分が楽しいからこそ、皆にも楽しく生きて欲しいと思えるんじゃないだろうか。


 少なくともあの人には、そういう風に生きて欲しい。

 木漏れ日にキラキラ光ってた金髪を思い出しながら、そんなことを考えた。


 見てろよ。

 あんたに気づかれない内に、如何にしてソレ(・・)を聞き出すか。

 ここまでずっと翻弄し続けてくれたあんたを、今度こそ、オレが。


 だからさ。オレの良いとこってめげないとこなの。

 オレがあんたに「うわあ」って言わせる時がすぐに来るって。

 初心で鈍くて恋愛初心者なあんたにだって、きっと、いまに分かるさ――

2016/04/22 初回投稿


次回から新章です。

この話と次章の間に番外編の『くーオレ』が入る、という時系列になってます。番外編の時間に辿り着くまでに結構時間がかかりました、すみません。

番外編はユーザページからは見えませんが、削除した訳ではないので、下のリンクからあっさり辿り着けます。さっくりライトなテイストです。本編を左右するお話はありませんが、ご興味ある方はどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ