再会
意識を失っている教祖を踏み越えて部屋の外へ出ると、状況が一変していた。
爆発音や人の悲鳴であれほど騒がしかったのが、まるで嘘だったかのように静まり返っていたのだ。
「……どうなったんだろ?」
「どうって、優貴さんが勝ったに決まってるでしょ」
弱気な発言をする進を、舞夏が窘める。
「ごめん……そうだね」
舞夏に謝罪しながらも、進は最悪の事態に備えることにした。
何が出てきても二人だけは必ず守れるようにと……。
そう決意した矢先、
「進君。無事か?」
通路の向こうから、優貴が小走りで近付いてくるのが見えた。
後ろには白鳥や城戸、他の仲間の姿もある。どうやら全員無事にここまで辿り着いたようだった。
今、最も遭いたかった人が目の前に現れた事で、進は体の緊張を解いた。
それは舞夏も同じ様で、舞夏はいきなり駆け出すと、優貴の胸へと飛び込んだ。
「優貴さん、私、私……」
「ああ、何も言わなくていい。わかっているから」
「……はい」
二人は通路の真ん中で抱き合い、暫しの邂逅に浸る。
泣きじゃくる舞夏をどうにか宥めた優貴は、舞夏を白鳥に任せ、続いて進たちの前へとやって来る。
「歩ちゃんも無事でよかった」
「ん」
優貴が歩の頭を優しく撫でると、歩は目を細めて喜びを露わにする。
「進君も頑張ったな」
「優貴さん……」
「おいおい、大丈夫か。しっかりしろ」
緊張が一気に解けた所為か、崩れるように倒れる進を見て、優貴が慌てて支える。
優貴の胸に顔を埋めるような姿勢になった進は、そのまま優貴に体重を預ける。
「おっと!? なんだいきなり、重いだろうが」
「……優貴さん。俺、やりましたよ……二人を……助けました」
「ああ。そのようだな。褒めてやろう」
優貴は進を胸に抱いたまま、乱暴に頭を撫でる。
しかし、
「……進君?」
進がぐったりとして動かない事に、優貴は眉根を寄せる。
「兄ちゃん!?」
「進っ! そうだ、優貴さん。進の足を見て下さい」
「足……だと?」
舞夏の言葉で、優貴の視線が進の足元へと向けられ、そして気付いた。
「進君。まさか、撃たれたのか?」
優貴が驚いて進に「おいっ!」よ問いかけるが、進にその声は届かなかった。
目は開いてはいるが、霞がかかったかのようにぼやけて物の判別が出来ない。
誰かが何かを必死に訴えてはいるが、何を言っているのか聞き取れない。
だが、進にとってそんな事は些細な問題だ。
歩を、舞夏を無事に助け出すことが出来たのだ。
二人の笑顔を失わずに済んだのだ。
無事に優貴とも合流できたし、これ以上、二人が危険に晒される心配もないだろう。
安心すると、さっきまで忘れていた疲れが、船に穴が開いたかのように次々と体を侵蝕し、全身へと駆け巡る。
もう、指を一本動かす体力すらない。だから今日はもう休もう。二人を助け出すのに自分の力を全て吐き出したのだ。さっきから体が本能的に休めと命令しているのか、体が鉛のように重く、目を開けるのすら億劫になってきた。
「優貴……さん……ふたりを……たの………………ます」
最後の気力を振り絞ってどうにかそれだけ告げると、進の意識はまるで深い水の底に落ちていくようにまどろみの中へと沈んでいった。




