目的の為ならば
「優貴さん、偵察に行って来ました」
程なくして、タブレットを手に持った城戸が現れた。
「ご苦労。それで、二人は中に?」
「ええ、やはりこの屋敷に運び込まれたようです」
城戸はタブレットを操作し、中の見取り図と思われる画面を見せながら手に入れた情報を話し始める。
「監禁されている場所はおそらくここ、屋敷の三階にある教祖の部屋かと思われます。屋敷の構造はそう複雑ではないのですが、如何せん広いので辿り着くまでに時間がかかるのがネックですね。それと、三階へ上がるには専用の鍵が必要なようで、これの入手も絶対条件となります。運び込まれてからそれなりの時間は経っていますが、二人が薬で目を覚ますのは、まだ先のようなので、最悪の展開にはなっていないそうです。ですが、早く救出するに越した事はないかと……」
城戸の言葉に、優貴はゆっくりと頷く。
「うむ。それで、中の様子は?」
「流石に教団の総本山だけあって、中にはそれなりの人間が配置されているようです。数の内訳は、元軍人や傭兵崩れといった専門職が九人、後は雑魚が数十人。各々が非合法の装備をしているようですが、気をつけるのは前者だけで大丈夫かと。それと、攻めるなら、奇襲からの一気呵成が有効かと思われます」
次に城戸は画面を切り替え、相手が装備している武器の詳細について語り始めた。
城戸からの詳細を聞きながら、突入作戦について議論を交わす優貴たちを見て、進の頭にある疑問が浮かぶ。
「あ、あの……どうしてそんなに詳しく知っているのですか?」
そうなのだ。城戸が持ってきた情報は、確かに知りたいと思っていた情報なのだが、余りにも詳しすぎるのだ。
人数もおおよそではなく、誰が何人、その戦闘スタイルから更には各々が所持している武器まで、この短時間で調査してきたとは思えない情報量だった。
「あ~、これね」
進からの疑問に、城戸は珍しく言い淀む。
「これは、その……親切な人に教えてもらったんだ」
「親切な人って、あんな悪の教団にそんな親切な人がいるわけないでしょう」
「あ~、うん。まあ……そうなんだけどね」
「まさか、ここで働いている女の人に迫ったんですか?」
「ええっ!? 流石の僕でも、この短時間じゃ女の人を満足させられないよ」
「もういいだろう進君。あんまり城戸を苛めてやるな」
城戸に執拗に迫る進を、優貴がうんざりしたように引き剥がす。
「情報を得る方法なんて限られているだろう。城戸は仲間と共に、外にいる信者を捕まえて無理矢理吐かせた。ほら、これでいいだろう?」
「え、あっ、はい……ってそれって問題じゃないんですか?」
優貴の一言に、進は思わず声を荒げた。
言葉通りに解釈するならば、城戸は情報を得る為にクオリアの光の信者を捕まえて、情報を、恐らく拷問をして無理矢理情報を吐かせたということだろう。
いくら状況が切羽詰っていると言っても、そんな非人道的な方法を取っていいものだろうか? それとも、ちょっと脅しただけですんなり情報と得られたのだろうか?
「……それについては、深く考えない方がいいよ」
「え?」
「進君が考えているより、三倍は凄惨な光景だから、さ」
城戸は自嘲的に笑うと、タブレットをしまって足早に去って行った。
「……城戸さん」
城戸が去っていく方向を、進は呆然と見送った。
具体的に何が行われたのかは想像も付かないが、彼が何を思って非常に徹したのかは理解できた。
それは勿論、舞夏と歩の為。二人を助ける為に、これから救出に向かう皆が危険な目に遭わないようにという配慮から行動を起こしたのだ。
進としては、それに応えないわけにはいかなかった。
「これは……絶対に二人を助けないといけませんね」
「フッ、ここでその言葉が出て来るのは、実に頼もしいな」
進の心情を察したかのように、優貴は進の頭を乱暴に撫でた。
「さて、これで準備は整ったな」
優貴は立ち上がると、懐からレジーバーを取り出す。
「野朗共、これから救出作戦を決行する。準備はいいか!」
優貴の言葉に、レシーバーから野太い男たちの叫び声が聞こえてきた。
どうやら、気合は充分のようだった。
最期に、優貴は進の覚悟を確かめるように視線を合わせる。
それに進は、力強く頷いて応えた。
それを見た優貴もゆっくり頷くと、レシーバーに向かって決めの一言を発する。
「いくぞ野朗共! 薄汚いゴミ共を駆除してクリーンな街を取り戻すんだ!」
その言葉に、全員の「応!」という叫び声が重なった。




