進んだ先には……
――舞夏が監禁された部屋で目を覚ます一時間程前、進は城戸に連れられてとある場所へ来ていた。
そこは、商店街から少し離れた所にある巨大な工場跡地。外資系の巨大ショッピングモールが建つ予定だったのだが、地元の住民の猛烈な反対によって計画が頓挫し、造りかけの建物だけが放置された、ここら辺りでは有名な心霊スポットだった。
「ちょっ……勝手に入っていいんですか?」
「いいからいいから。ほら、早くおいでよ」
城戸は、全く躊躇することなく「立入り禁止」と書かれたプレートがぶら下がった黄色いロープを潜り、進を手招きする。
「ああ~、もうっ!」
こんな心細い所で一人待っていられる筈もなく、進は諦めて城戸の後に続いた。
建物内に入ると、冷えた空気が体に触れ、進は思わず自身を抱く。
辺りを見渡してみたが、城戸の姿は既にない。
「城戸さ~ん」
声をかけてみたが、城戸からの返事はない。
既に奥に行ってしまったのだろうか? そう判断し、進は更に奥へと歩を進めた。
入った場所はどうやら店の従業員口に当たる場所で、大きな外観からは想像も出来ないような細い通路だった。
内装を一切行われていない建物内は、壁から床、天井までコンクリートがむき出しになっており、その所為か外と比べてかなり寒く感じる。更に、灯りがない所為で、五メートル先も碌に見えない。こうなると幽霊の存在を信じていなくても、何か出てくるのではないかと意識してしまう。
進は、まるで自分一人だけ世界に取り残されたような寂しさを感じ、思わず小さく身震いした。
「……は、早く城戸さんを捜さないとな」
誰となくひとりごちると、動揺を隠すように歩を早める。
細い通路内にあるいくつかの小部屋を覗き、誰かいないかを確認しながら進む。
恐る恐る進み続け、突き当たりの扉を開けると、
「え?」
目の前に広がる光景に、思わず声が漏れた。
扉の先は体育館程の広い空間で、工事現場で見かけるような眩い照明の前に見慣れた人物、城戸だけでなく、優貴や白鳥、おそらく御神楽クリーンサービスの面子、全員が揃っていた。
しかし、その様子はいつもと何処か違っていた。
御神楽クリーンサービスの仕事着は、仕事先で怪我をしないように、汚れてもいいように、そして何より、動き易さを重視した特注のツナギを着るのだが、今はその上に、警備会社で着用するような防弾ベストに、関節を守るようなサポーターを付けていた。
更に、手には仕事で使う見慣れた掃除道具ではなく、普通の生活ではまずお目にかかれない代物、明かりを受けて黒光りする数々の銃器を手にしていた。
まるで、これから戦争にでも向かうような物々しい雰囲気に、進は唖然としていた。
「やあ、進君。遅かったな」
「……優貴さん」
気がつけば、他の皆と同じように、完全武装した優貴がすぐ傍に立っていた。




