頼った先で……
砂漠のど真ん中で、水と食料、更には地図まで失ってしまった人のように、先立つものがなくなってしまった進は、駅前の広場で項垂れていた。
日が傾き始めた駅前は、仕事帰りと、学校帰りの人で早くもごった返していた。
誰もが今日の成果を労い、笑顔で歩いているのだが、それが今の進には全員が自分を嘲笑っているように見えた。
「どいつもこいつもヘラヘラしやがって……」
呪いの言葉を吐きながら、道行く人を怨めしく睨んでいると、両親から三通目のメールがやって来た。
もうどんな内容でも驚かない。そう決意して送られてきたメールを開く。
しかし、今度のメールは今までとは一風違う内容だった。
『無一文になっちゃったら、流石の進も生活に困っちゃうと思って、進たちの面倒を見てくれそうな人を見つけておいたので地図を添付するね。話はつけてあるので、遠慮せず頼ってね』
「なん……だって?」
慌てて添付されていた地図を開くと、何処かの施設と思われる場所への行き方と「クオリアの光」という施設名と電話番号が書かれていた。
正直、怪しいことこの上なかったが、進は藁にも縋る気持ちで書かれていた電話番号に電話してみた。
『もしもし、こちらクオリアの光、日本支部事務所でこざいます』
「もしもし、実は……」
電話に出たのは、はきはきと喋るハスキーボイスの女性で、こちらの名前と事情を告げると、それだけでこちらの謂わんとするところを理解し、一度顔を見たいので、兄妹揃ってこちらまで来て欲しいと言ってきた。
最初は怪しい組織としか思っていない進だったが、女性が電話の向こうで涙ぐんでこちらの事情に同情し、絶対に救ってみせるから安心して欲しいと言われ、進は女性の言葉をすっかり信じ込んでしまった。
善は急げということで、進は学校から帰ってきた妹の歩と共に「クオリアの光」の施設の一つであるという山中の道場へと、電車とバスを乗り継ぎ、険しい山道を数時間かけて踏破し、どうにかその日のうちに辿り着いた。
しかし、現れたのは電話に出た女性ではなく、見るからに屈強な男たちで、二人の姿を見るや、進と歩を無理矢理引き離そうとした。
歩と引き離す理由をいくら問いただしても「いいから」としか言わない男たちを不審に思った進は、隙を見て歩と共に逃げ出した。
それから、進と男たちの壮絶な追いかけっこが始まったのだった。