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マルちゃんのお勤め

作者: 田中コウ
掲載日:2026/03/29

ジョギング途中、可愛いチワワの散歩を見かけました。楽しい散歩だと思いますが、もしかしたら違うのかもと思い、筆をとりました。

 私の名前はマルちゃんです。種族は犬のチワワ、職業はペット、新谷家に住み込みで働いています。

 私の主なお勤めは、おじいちゃんとおばあちゃんの散歩の付き添いです。

 おじいちゃんとおばあちゃんは散歩が大好きです。午前に2回午後に2回散歩に出かけます。

 でも、おじいちゃんとおばあちゃんは一緒に住んでるのに仲が悪いのです。散歩には一緒に行きません。おじいちゃんとおばあちゃんは別々にお散歩に行きます。

 おかげで私は毎日8回散歩に出かけなければなりません。正直言って辛いです。

 でも仕方がありません。これが私の仕事ですから。


 今日もお仕事の時間が来たようです。

 おじいちゃんがリードを持って近づいてきました。

 まだ朝ご飯も食べていません。

「マルちゃん、おはよう。お散歩に行こうね」

「キャンキャン」

 無駄だとわかっていても行きたくないと言いました。

「そうか。マルちゃんはお散歩大好きだね」

 やはり無駄でした。

 素直についていくことにしました。

 リードに繋がれおじいちゃんの後をテクテクとついていきます。

 約1キロメートルほどでしょうか、いつも決まったコースを歩きます。おじいちゃんにとっては程良い距離でしょうが、体の小さな私にとって1キロメートルは大変きつい行軍になります。

 歯を食いしばり、一生懸命ついていきます。

 途中でおじいちゃんは知り合いと出会い挨拶をしています。休憩時間です。助かります。

「マルちゃん、おじいちゃんに散歩連れてきてもらって嬉しいね」

「キャンキャン」

 何が嬉しいものか、しっぽ見ろよ、振ってないだろ。見て分からないのか。

 私は悪態をつきます。

「あら、かわいい。お返事ができるのね。お利口さんね」

「・・・」

 そう言うお前は馬鹿だと心の中でつぶやく。

 次第と心が荒んで行くのを感じます。

 挨拶が終わり散歩は再開です。ひと時の休憩、足は休めましたが、心が疲弊しました。

 また、おじちゃんの後を小さな足でついて行きます。

 段々と俯き加減になります。頑張ります。

 ふと気が付くとおじいちゃんの足が止まっています。頭を上げると目の前には、新谷家がありました。

 帰ってきたのだ。私は頑張った。今日のお仕事の8分の1が終わった。嬉しい。

「気持ちが良い散歩だったね。また行こうね」

「キャンキャン」

 行きたくありませんと訴える。


「お父さん、朝ご飯の用意ができていますよ」

 奥から若奥さんの声が届く。

「ああ、今行くよ。マルも行こう」

「キャンキャン」

 待ってました。この職場で唯一いい所は食事です。極上と言える物です。

 何故解かるのか、それは散歩の途中で出会う、他家の犬の糞、その残り香です。

 それによると、近所の犬は余り良い物を食べさせてもらっていないようです。

 残り香を嗅ぐ、その時ばかりは優越感に浸ります。

 そもそも、他家の犬の散歩は午前に1回、午後に1回です。8回も行う私と比べようもありません。私の報酬が高いのは当たり前です。


 私はおじちゃんに足を拭いてもらい、台所に入ります。そこの片隅に、私専用の食事が用意されています。

「待て」

 おじいちゃんが、食事前の儀式を行います。私は料理(ドックフード)を前にお座りします。

「よし」

 私は食べ始めます。毎回何のための儀式なのか解らないが、素直に従います。

 私は極上の食事を終え、玄関内に設置されている段ボール箱に入ります。次の任務まで一休みです。


「マルちゃん。お散歩に行こうね」

 おばあちゃんだ。仕方がない。仕事の時間らしい。

 私はまたリードに繋がれ、散歩に出発した。おばあちゃんは、おじいちゃんと比べ足が遅い。食後の運動には良い具合かもしれない。

 しかし、良い事ばかりではない。散歩の途中で近所の知り合いに会おうものなら、話が長く30分以上その場から動けない。


 前方を見ると、話し好きのおばさんが、こちらに歩いて来る。今日も長い一日になりそうだ。


書いた結果、性格の悪いマルちゃんになってしまいました。ごめんなさい。

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