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短編

夢の中で死ぬ

作者: 月蜜慈雨
掲載日:2026/01/30




 赤い髪が、街灯に反射してギラギラ光っている。まるで赤色矮星のようだ。

 だってそうじゃないか。

 見上げた先にいる赤髪の女性が、あんまりにも美しいから。

 長い赤い髪がマグマみたいだ。冬の装いとは思えないようなトップスに垂れている。

 女性は寒さなんて気にもしないような素振りで、街灯にもたれていた。

 急性アルコール中毒なのかもしれない。同窓会の飲み会の帰りだった。積もる話がありすぎて、ついつい深酒してしまった。



「ああ…」



 そう言って座り込む。冬の地べたは背筋が凍るほど冷たいが、アルコールで煮え切った頭には丁度良かった。

 赤髪の女性がこちらに近づいてくる。見れば見るほど綺麗な赤髪だ。染めているのだろうか。だとしたら、腕の良い美容師だ。



「おい」



 赤髪の女性は目を吊り上げながら言った。



「こんな所で寝ると死ぬぞ、おっさん」



 その乱暴な口調もらしい、と思ってしまった。この人の名前すら知らないというのに。

 呂律もおぼつかない口で喋った。



「そうだよね。今、立つよ」



 多少ふらつきもしたし、一度倒れかかったが何とか立てた。年々、身体の自由が効かなくなるのを感じる。

 改めて女性を見る。私よりほんの少し背が低く、典型的な日本人顔だ。目付きは涼やかで、アイラインが濃い。やはり染めているのだろうか。でも似合っている。

 赤髪の女性はジト目でこちらを見つめ言った。



「なんか危なっかしいなぁ、おっさん。今、タクシー呼んでやるよ」


「ありがとう、優しいね」


「こんなの、優しさでもなんでもないだろ」



 なんてことないような言葉に、この人は日頃からこうして人助けをしているのだろうか、と思ってしまう。それは私にとって少し危うく思えた。世の中そんな、善人だけじゃないのだから。



「あのねぇ、こんなこと私が言うのもあれだけど、世の中思ったより危険だから、気をつけるんだよ」


「ご忠告どーも、でも今のおっさんに負ける気はしないけどな」



 そう言って、赤髪の人はニカっと笑った。寒さを忘れさせる、太陽のような笑みだった。

 それもそうか、どう見たって、今の私よりこの人の方が強そうだ。

 タクシーを待っている間、一緒にいてくれた。ポツポツと、なんてことない話をする。



「なぁ、セクハラだと思ったら答えなくていいけど、その格好寒くないのかなって」


「私は寒さに強いんだ。これくらい、なんてことないよ」



 なんて羨ましい体質だ。

 やがて、タクシーが来た。



「それじゃあな、おっさん」


「ありがとう、本当に」



 タクシーに乗り込もうとした瞬間、ふと思い立って、咄嗟に振り向いて質問する。



「あの、何で赤髪なんだ?」



 背を向けかけていたその人が、また私の方を見て、今度はニヤっと笑った。



「私の1番好きな色だから!」



 タクシーのドアが閉まる。今度こそその人は何処かに行ってしまった。

 運転手の声に、機械的に反応する。

 もう二度と会う事はないだろう、その人。

 最初に見た鮮烈な赤が忘れられない。

 夢の中なら会えるだろうか。

 夢の中なら、あのマグマに焼かれ死んでもいいのかもしれない。

 車窓に街灯が反射して、それが走馬灯のようだ。









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― 新着の感想 ―
タイトルが刺激的で、エピソードも寒さに強い女性の赤髪が際立っていますね。 結びの情景、車窓に流れる街灯をみながら回想する走馬灯のシーンが鮮やかに浮かんできました。 この一行でタイトルが更に鮮烈に生きて…
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