第九十八話:機械巨獣?――バハムート曰く「これは準備運動にもならん」
(場所:深淵SPA会所・正門)
影が大地を覆う。山のように落ちてくる機械の巨脚を見て、ベルゼブブは口元を拭いた。「こいつは硬ぇな。歯が欠ける。」
「なら、歯が丈夫な奴に替えろ。」
リンは椅子に座ったまま、視線すら上げない。巨脚が屋根に触れる――その寸前。タンクトップ姿、首にタオル、湯気をまとった大男が、風呂場から不機嫌そうに出てきた。龍王バハムート。
「誰だよ、こんな騒ぎ。俺が背中流してんの分かんねぇのか?」
バハムートは変身しない。ただ片手を頭上に掲げ、“支える”仕草をした。
――ドゴォォォン!!!
天地を裂く轟音。百メートル級の機械巨脚が止まった。人間サイズの“手”に、空中で受け止められ――微動だにしない。
「……あり得ん!!」
操縦席の代理人が目玉を剥く。「炉心最大出力!踏み潰せ!何万トンだと思ってる!!」
機械ゴジラのエンジンが咆哮し、地面が沈む。だが、その手は“溶接”されたみたいに揺れない。
「これだけ?」
バハムートは見上げ、白い牙を覗かせる。頂点捕食者の蔑みが、その目に宿った。「これがお前らの誇る科学か。軽すぎる。――這え。」
指が一気に食い込む。豆腐を掴むみたいに超合金装甲へ爪を立て、腰を捻り――過不足のない、完璧な“肩車投げ”。
――ゴゴゴゴォン!!!
百メートルの巨獣が、理不尽な怪力でぶん回され、地面へ叩きつけられた。通り一本が、丸ごと跳ね上がる。続くのは、残虐な“解体ショー”。
バハムートは胸部に跳び乗り、両手で装甲板を掴む。缶詰を剥くように――厚さ二メートルの装甲を“引き裂いた”。ギギギィィ――耳を刺す金属断裂音。火花が弾け、部品が飛ぶ。
「脆ぇ!つまんねぇ!」
龍王は悪態を吐きながら、容赦なく剥がす、剥がす。
「おい!ちょ、待て待て!」
リンが横で青ざめて叫ぶ。「動力炉は高いんだ!潰すな!あれは売れるスクラップだ! CPUは残しとけ、アリスのおやつになる!!」
【配信コメント】
[ 素手で高達解体www ]
[ 龍王:硬い殻だが、身が少ねぇ。 ]
[ リンの注目点が金の匂いしかしない件 ]
[ 機械飛昇?肉体の暴力の前じゃ冗談だろ ]
戦闘は終わった。リンは煙を上げる残骸へ足を乗せ、遠くの“廃土財閥本部ビル”の灯りを見据える。ネクタイを整え、カメラへ微笑みかけた。
「来るなら、返すのが礼儀だ。“食べ放題”を届けてくれたんだ。なら、こっちも“お返し”に行こう。アリス。強欲魔王を呼べ。今夜は――“帳簿”を見に行く。」




