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第九十五話:サイバー精神病?――違う、“ハードウェア拒絶反応”だ

(場所:第13区・着陸点)


「死ねえ!」


鉄頭兄貴が電ノコを振り回して突進する。リンは動かない。アリスが瞬時に前へ出て、片手で高速回転するノコ刃を正確につかんだ。「バキッ。」S級機娘の握力が、ノコ刃を粉砕した。


「な……なんだと?」鉄頭兄貴が固まる。


リンは近づき、油汚れまみれの金属頭部へ手を当てた。


「動くな。――声を聞かせろ。」


リンが使ったのは魔法ではない。【機械共感(アリスのデータ・インターフェース経由)】。


「……やはりな。」リンは小さくため息をつく。「お前が暴れるのは、人を殺したいからじゃない。安物の海賊版義肢を入れたせいだ。神経インターフェースが未校正。ドライバも三十年前の割れ版。毎秒、お前の神経は悲鳴を上げている。これは【幻肢痛】に併発した【重度のハードウェア拒絶反応】だ。十年だ。お前は一度も安眠できなかった。脳内ノイズが、お前に“頭をノコで割りたい”と思わせる。――違うか?」


鉄頭兄貴の赤い機械義眼が、わずかに震えた。図星だった。


「少し我慢しろ。――痒いかもしれない。」


リンはアリスに目配せする。「アリス. ドライバを書き換えろ。痛覚遮断モード。神経互換の最適化。」


「了解。パッチ注入中……進捗100%。」


――ブン。


鉄頭兄貴の赤い警告灯が、柔らかな緑へ変わる。十年続いた、骨の髄を削るような激痛が――突然、消えた。


ガタン。


鉄頭兄貴は膝をついた。金属の頭を抱え、錆びたような泣き声を漏らす。


「……痛く、ない……本当に、何も……痛くない…… う、うう……母ちゃん……俺、やっと寝れる……」


周囲の暴徒が呆然とする。人を殺すことに瞬きもしなかった鉄頭兄貴が――泣いている?


リンは名刺を取り出し、鉄頭兄貴の機械の手に差し込んだ。


「根治したいか?正版OSにアップグレードしたいか? 兄弟を連れて、このゴミ捨て場を片付けろ。ここに――“店”を出す。」

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