第九十四話:無罪放免の代償?――“サイバー精神病”惑星を押し付けられる
(場所:銀河連邦議会ホール)
裁判には勝った。だが議会の老獪な政治屋は、リンを気持ちよく終わらせない。
「リン殿、おめでとう。」
議長――四つ目の老狐が、薄笑いで書類を差し出す。
「領主任命状だ。銀河系第13区を、深淵グループの私領として下賜する。」
リンは座標を見て、眉をわずかに上げた。第13区。星図では漆黒で塗り潰され、別名【機械廃土星(Cyber-Junk)】と記される。放棄された重工業惑星。毒性スモッグ、廃棄された義肢、そして違法改造で“サイバー精神病”を発症した流浪の暴徒が溢れる――銀河のスラムであり、無法地帯。
「……議長、俺を殺しに来たな。」
リンは書類を閉じた。拒むどころか、笑った。
「ゴミ捨て場?違う。俺には“治療を待つ患者”の山にしか見えない。この土地、もらおう。」
……三日後。リンの船が第13区に降り立つ。ハッチが開いた瞬間、刺すような機油と血の臭いが押し寄せた。空は灰色。地面には折れた機械腕と錆びた歯車が転がる。
「グォオオ!」
一行が足を踏み出す前に、狂気の赤い光を宿した生体改造暴徒が群れを成して囲む。電ノコ、レーザーブレード。体の九割が安物パーツに置換された、継ぎ接ぎの怪物たち。
「新しい領主ってやつか?」
先頭の“鉄頭兄貴”――頭部がチタン合金に換装された男が、轟く電ノコを掲げる。音声カード不良のせいで声は耳障りに割れていた。
「金と船を置いてけ。さもなきゃ、お前を分解して部品にして、スクラップで売る。」
アーサーが聖剣を抜く。「リン、こいつら狂ってる。殺るか?」
「いいや。」
リンは防毒マスクを押し上げ、狂乱の暴徒を“迷える羊”を見る目で見つめた。
「狂ってるんじゃない。……ただ、痛いだけだ。」




