第九十二話:証人は創世神?――ただの“引退したクソガキ”だった
(場所:法廷)
流れがリンに傾きかけた瞬間、機械族執行官が焦った。
「裁判長!口先は巧みですが、第404号惑星(地球)はそもそも捨てられたNカード!連邦法により、無主かつ無価値の惑星は解体対象です! それを証明するため、第404号惑星の元所有者――創世神を召喚します!」
ドン――!
神聖な光が法廷へ降り注ぐ。全人類が息を呑む。造物主とは、荘厳で、神々しく、直視不能な存在――のはずだった。
光が晴れる。現れたのは、壮麗な神ではない。巨大なパーカーを着てヘッドホンをし、ゲーム機を握り、不機嫌そうにガムを噛む“宇宙の熊ガキ”だった。彼はコントローラを連打しながら、だるそうに言った。
「は?誰?いまランク戦なんだけど。」
執行官が恭しく問う。「尊き創世者よ、第404号惑星について――」
「おー、あれね。」熊ガキは地球のホログラムを一瞥した。「あれは数億年前に適当にこねた泥。ステ低すぎてさ。消して作り直そうと思ったんだけど、そのうちアカウントのパス忘れた。さっさと爆破しといて。サーバ容量食うし、見ててイラつく。」
全人類の心が砕けた。私たちは神の寵児ではない。熊ガキが飽きた廃データだった。
「聞きましたね!」執行官が勝ち誇る。「元所有者が解体に同意!」
「待て。」
リンは証人席へ歩み寄り、熊ガキのゲーム機の電源を抜いた。
「なにすんだよ!勝ち確だったのに!」熊ガキが激怒する。
「勝ち確?寝言は寝て言え。」
リンは見下ろすように言い放つ。その眼差しは悪魔より冷たい。
「お前が引退したのは、地球がゴミだからじゃない。お前が――下手だからだ。」
「……は?」熊ガキが固まる。
「診断結果:『責任感欠如』+『回避型愛着』+『ゲーム依存』。」
リンは毒舌モードを全開にする。
「作って壊して逃げる。詰んだらリセマラ。お前は神に向いてない。ただの現実逃避の負け犬プレイヤーだ。 見ろ、今の地球を。お前が捨てた後、俺たちは文明を築き、飯を作り、お前のクソゲーの一万倍面白い娯楽を生み出した。地球がダメなんじゃない。――お前が地球に相応しくない。」
熊ガキは叱責に打ちのめされた。唇が震え、涙が滲む。
「う、うう……俺は下手じゃ……ない……やめろよ……」
次の瞬間。熊ガキは法廷で手のひらを返し、リンの脚にしがみついて泣きじゃくった。
「消さない!消さないから!俺もやる!俺も遊ぶ!頼む、俺も混ぜて!盲盒引きたい!!」




