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第七十九話:憤怒魔王? 爆薬いらずの“解体班長”

(場所:深淵診療所・待合ホール)


「ドォン――!!」


 轟音とともに、修理したばかりの正門がまた粉砕された。全身を地獄の炎で燃やし、筋肉が爆ぜた狂戦士が突入する。眼は血走り、手には折れた柱の半分。憤怒の魔王・サマエル(Satan / Samael)。


「あああああ! 何もかも気に食わねぇ!! あの花瓶! 叩き割れ! あの彫像! 叩き割れ! あの人間! 引き裂け!」


 彼は重度の【間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive Disorder)】。理由など要らない。ただ壊したい。感情制御のバルブが壊れ、溜まった怒気を“破壊”で放出しないと死ぬ。


 警備隊長の“戦神じいさん”が動こうとした、その瞬間。


「待て」


 リンが手で制した。「この天然の破壊力、ここで使うと修理が増えるだけだ。――無駄だろ」


 リンは地図を手に、発狂するサマエルの前へ歩いた。


「サマエル。私を見ろ」


「吠えろ! 引き裂いてやる!!」


 サマエルが拳を振り上げ、風圧がリンの頬を裂いた。


「壊したいんだろ? ここの物は脆い。壊しても物足りない」


 リンは窓外を指す。深淵の縁に広がる、黒曜石の廃鉱区。都市計画で撤去予定の旧神違法建築群。「見えるか。あの山。世界一硬い黒曜石の山だ。私は賭ける。――お前の拳では砕けない」


「はぁ? 俺を舐めてんのか!!」


 怒りが即座に“挑発へ”転移した。力を疑われるのは、彼にとって最上級の侮辱だ。「俺の一発で地心まで割ってやる!!」


「信じない。砕いて見せろ」


 リンは淡々と煽る。「ああああ! ムカつく!!」


 サマエルは咆哮し、黒曜石山へ突っ込んだ。ドン! ドン! ドン! 一撃ごとに山が崩れ、地が裂ける。地精の爆薬でも割れない鉱石が、豆腐みたいに砕け散る。


「最高だ! 最高すぎる!! この砕ける音! この手応え!!」


 数万年分の怒りが、ようやく“正しい排出口”を得た。リンは遠くから、請負業者にヘルメットを渡す。


「行け。契約書にサインさせろ。役職:【深淵爆破大隊・隊長】。出来高払いだ。山一つ砕いたら、烈酒一樽」


 結末:憤怒魔王、入職。深淵の鉱産開発効率は10000%向上した。

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