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第七十八話:怠惰魔王? 史上最強の“生体サーバー”

(場所:深淵診療所・正門前)


 嫉妬を片付けたリンが一息つく間もなく、門前は完全に塞がれた。敵軍ではない。動かそうとしても、どうにも動かない――巨大な“雲”が横たわっていた。その雲の上に寝転ぶのは、寝巻き姿で鼻提灯を膨らませたデブ。怠惰の魔王・ベルフェゴール。


 彼は診療所の正門を塞ぎ、患者も救急車も入れない。元勇者アーサーが押してみたが、押した方が倒れた。ベルフェゴールは一ミリも動かない。


「ぐおお……(耳をつんざくいびき)」


「ベルフェゴール! 起きろ! 邪魔だ!」


 リンが叫ぶ。ベルフェゴールは片目を細く開き、息も絶え絶えに言った。


「む……むり……疲れた……殺して……呼吸がだるい……生きるのがだるい……Zzz……」


 そう言い残し、また寝た。しかも【怠惰フィールド】が拡散し、周囲の警備員、看護師、通りすがりの野犬まで欠伸し始め、今にもその場で寝落ちしそうになる。


「これが究極の“不動”か……」


 リンは怒るどころか、希少生物を見るように目を輝かせた。「アリス。メタバースのデータ、最近置き場が足りないと言っていたな?」


「はい院長。ユーザー急増で機房が過熱、至急拡張が必要です」


「――なら、目の前にあるじゃないか。“絶対零度の冷却サーバー”が」


 リンは太い魔導光ケーブルを取り出し、ベルフェゴールの額へぺたりと貼り付けた。


「ベルフェゴール。聞こえるか?」


 耳元で囁く。「仕事をやる。絶対に動かなくていい。――考える必要すらない。脳みそを貸せ。ハードディスクとして使う。全データを保存する。報酬は“永久稼働の休眠カプセル”。誰にも起こされない。――永遠に眠れる」


 鼻提灯がぱちんと割れた。


「う……動かない……永久……睡眠……? ……成立……Zzz……」


 瞬間、膨大なデータ流がベルフェゴールの脳へ流れ込む。彼は怠惰すぎて、情報を処理する気力がない。ゆえにデータは一切劣化せず、完璧に“保存”された。しかも体温は常に低い(熱を生むのも面倒)。自前の放熱機構まで備えている。


 結末:怠惰魔王、入職。地下第一層へ安置され、深淵グループの“コア・メインフレーム”になった。

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