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第七十七話:嫉妬魔王? “封印(BAN)”という権力を与えよ

(場所:深淵診療所・カップル相談室の外)


 強欲が沈んだ後、診療所にさらに厄介な陰湿客が来た。空気が酸っぱい。緑の毒液を滴らせ、人型へ変じた陰柔な男が、カップル相談室の窓外に張り付いている。中でイチャつく龍族カップルを、執念深く睨んでいた。嫉妬の魔王・リヴァイアサン。


「……どうして……」


 爪を噛み、血が滲む。血滴が床に落ち、腐食して穴が開く。「どうしてあの馬鹿ドラゴンに恋人がいる? どうしてあんな気持ち悪い笑顔を見せられる? 別れろ……! 全世界のカップルを兄妹にしてやる……!」


 彼は手を上げ、【嫉妬の呪い】を放とうとした。


「――待て」


 書類が“ぱしっ”と目の前に差し出される。壁にもたれたリンが、赤ペンを指で回していた。


「リヴァイアサン氏。盗み見は違法だ。だが君、“粗探し”の才能があるようだな?」


「どけ、リア充め!」


 蛇の瞳に怨毒が宿る。「繁盛してる院長が一番ムカつく! 成功してるのが腹立つ! お前の診療所、消防法違反で通報してやる! 幻鏡に一万件の低評価を叩き込む!」


「――素晴らしい。その執念だ」


 リンは怒るどころか、拍手して笑った。「誰の幸福も許せず、相手の機嫌を叩き潰さないと気が済まない――その粘着力こそ、私が欲しい“品質検査(QA)”だ」


 アリスが、運営ダッシュボードのデータ列を投影する。「見ろ。幻鏡には、成金自慢、カップル自慢、努力してるフリ――そんな投稿が溢れている。私は毎日うんざりだが、叩く時間がない。だが君には時間がある」


 リンは、真っ赤な腕章を差し出した。【ネット風紀・減点官(最高BAN権限付き)】。


「私のところに来い。――合法的な権力をやる。目の前でイチャついたらBAN。理由は“独身者虐待の疑い”。金持ち自慢は税務調査。嫉妬の炎で、この虚飾のネット世界を焼け」


 リヴァイアサンは腕章に触れ、震えた。権力の匂い。合法的に他人を傷つけられる快楽。


「ほ……本当に? 俺、好きにBANしていい? 好きに叩いていい?」


「もちろん。――仕事だ」


 リヴァイアサンは歪んだ歓喜に顔を変え、狂ったように笑う。「ハハハハ! お前らリア充、全員抹殺だ! 死ね、SNS!!」


 結末:嫉妬魔王、入職。その日、幻鏡の“イチャつきアカウント”は全て三日間凍結され、ネットは阿鼻叫喚となった。

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