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第七十三話:深淵海鮮城オープン! 地獄から来た“反トラスト”調査

旧支配者は逃げた。だが残した“遺産”は、破格だった。死の禁域だったこの地は、リンの超巨大資源地帯へ変わる。触手は切っても切っても尽きない(残存神性で再生する)。ショゴスも掬っても掬っても尽きない。


一週間後――


【深淵・海鮮バーベキューシティ】正式オープン。


リンは巨大なネオンサインの下、行列になった飛行船の隊列を見下ろした。ドラゴン族が来る。エルフが来る。鉄血帝国の貴族まで、サングラスでこっそり来る。


なぜなら噂が広がったからだ。ここで食える“鉄板触手”は、一口で寿命が十年伸び、さらに精力が爆上がりする――(リンの完全なデマだが、みんな信じた)


ジャンヌは『幻鏡』で配信中。口の周りは油だらけ。自分よりデカい焼き肉を掲げて叫ぶ。


「家族のみんな!この肉の繊維見て!口で溶ける!神力が舌の上で爆発!たった998で旧支配者をお持ち帰り!まだ来てない人、急いでぇ!!」


リンは后台の売上爆伸びを眺め、赤ワインをゆらして満足げに笑う。「これが商売の究極形だ。――敵の死体をキャッシュフローに変える」


……その時。空が、血のように赤く染まった。硫黄の臭いが、炭火の香りを上書きする。


大軍ではない。たった一人。暗赤のストライプスーツ、頭に羊角、手にはブリーフケース。悪魔の紳士が、溶岩の上を優雅に歩いてくる。彼はショゴス串を一本取り、ひと口。そして貪欲な笑みを浮かべた。


「悪くない。粗い調理の中に、高純度の神力がある」


悪魔は黒い炎をまとった名刺をテーブルへ置く。そこに刻まれた肩書――


【地獄第七層・暴食魔王・ベルゼブブ(Beelzebub)】


「リン院長、だね? 大きくやってるじゃないか」


ベルゼブブは金色の縦瞳を細め、低く艶のある声で続ける。「だが……香りが遠くまで届きすぎた。地獄の“老いぼれ”たちまで起きたよ」


「特に嫉妬の魔王は、君の稼ぎを見て目が真っ赤だ。それで、我々“地獄商会”は思うわけさ」


「この海鮮城の利益……七割を“上納金(用心棒代)”として払うのが筋じゃないか?」


リンは名刺を見て、次に“同業者”の顔を見る。厄介が来た。脳筋な旧支配者ではない。契約も詐欺も暴力も熟知し、貪欲で、しかも強い――地獄原住民、七つの大罪魔王。


「七割?」


リンは眼鏡を押し上げた。笑みは悪魔より悪魔的になる。「ベルゼブブさん。あなたは知らない。俺の最大の欠点は――護食だ」


背後の空間が歪む。S級社員(ドラゴン、機娘、元魔王、戦神……)がゆっくり現れ、リンの背に列を成す。


「俺の金を奪いたい? ――なら、地獄の牙が“さっきのタコ頭”より硬いか、試してみろ」


ベルゼブブは怒らない。むしろ笑みを深くした。「いいね。見せてもらおう。君の“精神干渉”が上か――我々の“原罪”が上か」


そして、さらりと追い打ちをかける。「それと、色欲の魔王がね……君の聖女に“お茶”を出しに行った。彼女が耐えられるといいが。――本物の誘惑に、ね」

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