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第六十七話:聖女の秘密?――“榜一(トップ課金)”が、まさかの……

(場所:深淵診療所・院長室)


断網は破られた。だが教廷は、そこで止まらない。


「――砰ッ!」


院長室の扉が、純度の高すぎる“聖なる力”で吹き飛んだ。


白い聖衣。目を覆う白い絹の帯(穢れを見ぬ証)。白銀の細剣を携えた少女が、神罰の化身のように歩み入る。


【聖教廷・審判聖女・ジャンヌ】


教廷の最終兵器。幼少から洗脳。肉は食わない。娯楽は知らない。男を見たことすらない(※大主教の老害を除く)。“禁欲”の代名詞。


「悪魔リン」


氷のように冷たい声。剣先がリンの喉を真っ直ぐに狙う。


「貴様は欲望に満ちた虚像で世人を惑わせた。だが私は違う。私の魂は清浄無垢。貴様の精神魔法など通じない」


「聖都へ来て審判を受けろ。……さもなくば、死ね」


リンは椅子にもたれ、手に“幸福の炭酸水”を持ったまま、“完璧な聖女”を落ち着いて観察する。


「清浄無垢?」


リンは笑った。妙に意味深に。


「聖女殿。心理学には法則がある。――抑圧が強いほど、反動は激しい」


「アリス。あのアカウントを調べろ」


「了解」


空中に巨大なホログラムが展開される。ジャンヌがわずかに眉を動かす(目隠しでも魔力の揺れは感じる)。


「何をしている……? こんな低級幻術――」


「幻術じゃない。管理画面のログだ」


リンが画面の赤い記録列を指差す。


「データベースによれば、教廷が端末使用を禁じているにも関わらず――毎晩0時〜3時に、SVIPの“透明アカ”が異常に活発だ」


「ID:『フライドチキンが食べたい白うさぎ』」


その瞬間。


氷の表情だったジャンヌの身体が、固まった。剣を握る手が、わずかに震える。


「それだけじゃない」


リンは容赦なく読み上げる。


「閲覧履歴Top3――」


「1位:【深夜飯テロまとめ】 重点視聴:黄金カリカリフライドチキン、脂が滴る角煮、爆裂チーズボール」


「2位:【猛男筋肉ショー】 特に戦神じいさんの『胸筋で岩を砕く』動画。30回リピート」


「3位:【聖光で焼肉をバレずに焼く方法】」


「……あ、ぁ……」


ジャンヌの顔が、目に見えて赤くなっていく。茹でた海老のように。頭から白い湯気まで出そうだ。


「そして、最重要ポイント」


リンは一枚の“課金明細”を出した。


「昨夜、あなたは戦神じいさんの配信へ――“深淵スーパー大ロケット”を10本投げた(総額10万ゴールド)」


「この金、教廷の“修繕基金”から流れてるが?」


リンが首を傾げる。


「聖女殿下。……教皇さまはご存じで?」


――カラン。


聖剣が床に落ちた。


ジャンヌは真っ赤な顔を両手で覆い、身体を小さく丸めて、ありえないほど可愛い悲鳴をあげる。


「や……やめて……お願い……!うぅ……死にたい……!」


これが伝説の――【社会的死】である。

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