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第五十七話:世界樹が咲いた!“噂話”で育つってマジ?

(場所:世界樹広場・お見合いフェス会場)


今夜は祭りの頂点。


ネオン、酒、爆音の音楽. DJはタコ船長デイヴィッド。


女王ティランデはリンが売った“限定高級オートクチュールドレス”で、黄金連邦のダイヤ成金(ゴブリン会長)と踊っていた。


「おお、女王よ。あなたの肌はダイヤのように輝く。」


ゴブリンが甘い声で囁く。


その横で、数百年女王を想い続けたエルフ護衛隊長が、目を真っ赤にしていた。


「その子から離れろ!!」


護衛隊長は突進し、ゴブリンを押しのけ、片膝をつく。


取り出したのは――ローンで買った巨大ダイヤの指輪。


「陛下!俺もあなたを愛しています!結婚してください!」


「あなたを養うために、働きます!」


会場が大歓声で揺れる。


「うおおおお!!」


それだけじゃない。


あちこちで嫉妬、告白、キス、抱擁が爆発していく。


ホルモン。


濃度が、森を満たす。


その瞬間。


ドン――!


枯れかけていた世界樹が、震えた。


久しく失っていたエネルギーを感じ取ったのだ。


愛欲と生命力。


黄ばんだ葉が一気に緑へ戻り、枝という枝に桃色の花が咲き乱れる。


さらに、命の象徴である“エルフ果実”(エルフは木から生まれる)が次々と実り始めた。


「産まれた!産まれた!世界樹が産んだ!!」


シルヴィは泣きながら叫ぶ。


リンは樹の下でシャンパンを片手に、狂騒のエルフたちを眺める。


功績を顔に出さない、あまりに悪い笑み。


「どうやら世界を救うのは英雄じゃない。」


「消費主義、虚栄心、そしてホルモンだ。」


そこへ、求婚を受けたばかりで頬を赤らめた女王ティランデが駆け寄ってくる。


「リン先生!本当にありがとう!世界樹が生き返った!私、五百歳ぶん若返った気がする!」


「どういたしまして。」


リンはにこやかに、長い長い請求書を差し出した。


「こちら、今回の治療費です。」


「内訳:ホログラム設備費、お見合い会場施工費、限定コスメ費、そして――世界樹覚醒サービス料。」


「合計:八百億ゴールド。」


さらにリンは、柔らかい声で刺す。


「それと、貴国はいま消費欲が高まっています。」


「うちの『深淵銀行』で、低金利ローンを組まれては?」


女王は請求書を見て手が震えた。


だが鏡に映る“美しい自分”を見て、歯を食いしばる。


「借りる!美しくいられるなら、いくらかかっても構わない!」


こうして。


低欲望のユートピアだったエルフの森は、見事に変貌した。


高消費、高負債、高熱量の“ファッション首都”へ。


そしてリンは――彼ら最大の債権者になった。

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