第五十六話:深淵お見合い広場!“独身税”って知ってる?
欲望の口が裂けたら、もう閉じない。
たった三日で、エルフの森の画風が変わった。
全員が起き上がり、必死に着飾り、稼ぎ、買い、買い、買い――。
だが世界樹は枯れたままだ。
出生率が、ゼロのままだから。
「バッグ買ってもさ、一人で背負えばいいし。」
エルフたちは依然として恋愛する気がない。
リンは黄ばんだ葉を見上げる。
「消費欲だけじゃ足りない。」
「危機感が要る。」
翌日。
森の広場に巨大な看板が立った。
【深淵・大型クロス種族お見合い会】
リンは黄金連邦の金持ちゴブリン、鉄血帝国のイケメン将校、獣人の筋肉猛男を呼び込み、“交流会”を開催する。
リンは拡声器で煽る。
「エルフのお姉さん方!こちらのゴブリン紳士を見ろ!」
「背は低いが金はある!深淵三環に家が十戸だ!」
「こっちの獣人大哥を見ろ!」
「この筋肉!この安心感!君たちの森の“ひ弱なイケメン”より百倍マシだ!」
外部種族の男たちを、容赦なく“商品陳列”するリン。
さらにエグいのがここからだ。
リンは新法を公布した。
【独身税法案】
「世界樹エネルギーが逼迫している。」
「よって本日より、五百歳を超えて独身のエルフには、“美貌税”と“呼吸税”を課す。」
「払いたくない?なら見合いに来い。」
大炎上。
高慢だった男エルフが焦り始めた。
今まで自分に無関心だった女エルフたちが、“金はあるが野暮ったい”ゴブリンや獣人と談笑している。
「ふざけるな!あんな醜い連中のどこがいい!」
「そうだ!俺には腹筋がある!俺だって稼げる!」
嫉妬。
人類最古の感情であり、最強の催情剤。
男エルフは美容院へ、ジムへ突撃し、求愛行動を狂ったように開始する。
【コメント】
【wwww ナマズ効果!】
【競争をぶち込むの、性格悪すぎて最高】
【男エルフ:みんなで独身だと思ってたのに、お前ら裏で見合いしてたのかよ!?】




