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第五十一話 邪神と勝負!? “豪運” vs “ビッグデータ”

リン・エンは、コアメンバー(アリス、アーサー、カミラ)を連れて甲板に降り立った。床のあちこちには、粘液がヌルヌルと広がっている。


船室の奥――身長五メートルはあろうかという巨体が、古びた船長服をまとい、ふんぞり返っていた。頭は、巨大な赤いタコ。


【深海邪神・デイビー・ジョーンズ(Davey Jones)】

【カルテ:重度ギャンブル依存症/収集癖/深海性孤独障害】


「この船の主は、私だ」


タコ船長は触手をしならせた。それぞれの触手の先には、サイコロ、トランプ、魂の契約書が巻きついている。


「人間よ。ここに来たからには、我がルールに従ってもらう。賭けをしよう。賭け金は……お前の魂と、この船の権利書だ。お前が勝れば、この船はお前のもの。だが負ければ――お前はここに残り、万年単位で船底のフジツボをこすり続けるのだ!」


空気が一気に凍りつく。アーサーが剣を抜いて叫ぶ。


「リン・エン先生、乗ってはダメだ! 邪神の賭場は全部イカサマです! ルールを決めてるのはあいつなんだ、勝てるわけがない!」


実際、伝承の中でデイビー・ジョーンズに勝った者は一人もいない。運を操り、出目を書き換え、結果そのものを書き換える――それが邪神の“ご都合主義”だからだ。


「賭博ねぇ」


リン・エンはサイコロを見下ろし、邪神以上に邪悪な笑みを浮かべた。


「船長、一つ教えておこう。この世界には、“運”よりも残酷で、“ツキ”よりも無慈悲なものがある」


リン・エンは、貝殻だらけの椅子を引いて優雅に腰掛ける。


「アリス、隣に」


S級機娘は素直に隣へ座り、その瞳のデータストリームを一気に加速させた。


「賭けには乗るよ、船長。ただし、サイコロだけっていうのは退屈だ。もっと“技術”のいるゲームにしよう。ブラックジャックだ。それから、公平を期すために、こちらからもレイズしよう」


リン・エンは背後の機械軍団を親指で指した。


「もし私が負けたら――このS級メカ天使三千体、全部そっちの所有物で構わない。その代わり、君が負けたら、船だけじゃない。君自身も、私の所有物だ」


タコ船長の触手が、興奮でビクビク震えだす。三千のS級魂――極上のえさだ。


「乗った! グワハハハ! 愚かな人間め! 我が領分で、運は永遠にこの身の味方よ!」

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