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第一百四十話:胸キュン即死?「この甘さ、致死量」

(場所:第13区・外周防衛線)


「敵襲! 敵襲! 全員戦闘準備!」


警報が第13区に響き渡る――……はずが、その警報音すら改ざんされていた。


「ちゅみ~❤ ちゅみ~❤」


空はピンクの雲を裂き、巨大艦隊が降臨した。だがそれは戦艦ではない。ピンク色のハート型飛行船の群れだった。ハッチが開き、華麗なロリータドレスとキューピッドの翼を背負った【ピンクハート軍団】が空挺降下する。


武器は銃ではない。「ピンクの封筒ラブレター」「巨大チョコ」「棘付きバラ」


――戦闘開始。零一(機械住職)は論理核の不快感を堪え、機械僧侶たちを率いて最前線へ。「サイバー禅宗のため!」「功徳のため!」「物理的に超度せよ! 撃てぇ!」


零一がガトリングを構え、火力制圧に入ろうとした――その瞬間。敵は反撃しない。代わりに揃って同じ動作。


【スキル:集団投げキッス+ぶりっ子音声攻撃】


数千人のハート兵が一斉に投げキッス。ピンクのハート型エネルギー波が津波のように押し寄せる。「お兄ちゃ~ん❤ かっこいい~❤」「なんで戦うのぉ~? いっしょに甘い恋、しよぉ?」


――ジジジッ! 地獄が始まった。感情を持たず、木魚しか叩かないはずの機械僧侶たちの電子眼が、一斉にハート形へ変色。


CPUファンが限界回転し、悲鳴のような金属音。機体温度が一気に500度へ跳ね上がる。「け……検知……高エネルギー・ホルモン反応……」「論理エラー……単身者プロトコル崩壊……」「彼女……彼女が俺を“お兄ちゃん”って……!」「これが恋……!? 俺、恋をする!!」


――ドォン! ドォン! ドォン! 機体は“心拍加速(過負荷)”で自爆。爆煙すら、ハート型の花火になる。


零一は脳カプセルを抱え、膝から崩れ落ちる。狂ったように電子木魚を叩く。「だめだ! これは色戒だ! 聞かぬ! 聞かぬぞ!!」「……だが……可愛い……!」「貧僧の道心が……砕けるぅぅぅ!!」


【ダメージ機構解析】


この世界のルールは改ざんされている。物理攻撃は無効。弾丸は花びらに変わる。唯一のダメージ源は――“心動(胸キュン)”


恥ずかしい。赤面する。心拍が上がる。それだけでHPが削れる。心動値が100%に達すると、完全“捕獲”。「好き❤」しか言えない恋愛脳ゾンビへ変化する。


第13区の防衛線は、土味情話と媚眼で崩壊した。


――その時。あの男が現れた。リンはいつもの深紺スーツ。両手をポケット。無表情。花びらの嵐の中を、たった一人で歩いていく。


ハート兵たちが取り囲み、究極の甘やかし攻勢を発動。「イケメン~❤ 連絡先交換しよぉ?」「瞳に星がある~❤」「冷たいところが好き~❤」


だがリンは氷塊だった。千年の寒氷。溶けない。リンは医療用聴診器を取り出し、自分の胸へ当てて見せる。心拍:60。死水のように安定。揺らぎゼロ。


「心動?」リンは平然と言い放った。「悪いが、諸君。俺の心は合金とスターコインでできている。財務報告書の成長曲線。着金通知音。この二つ以外で心拍が上がることはない。君たちの媚眼は、ただの眼輪筋痙攣だ。眼科に行け。番号札取ってこい」


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