表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/143

第一百三十九話:作風激変!「なんで背景にBGMが標準装備なんだ?」

(場所:第13区・深淵バイオテックビル/リンの寝室)


サイバー修仙ブームの後――第13区は本来、機械油と電子木魚と銭の匂いに満ちた、穏やかな朝を迎えるはずだった。


……だが。


リンが目を開けた、その瞬間。本能が叫んだ。


「――まずい」


リンは跳ね起き、枕の下の高エネルギー拳銃に手を伸ばす。


窓から差し込む光は、見慣れた冷色ネオンではない。吐き気がするほど高彩度の――ピンクの暖光だった。


空気には安っぽい薔薇香水が充満し、濃度はもはや「第13区を香料の樽に漬けた」レベルだ。


そして、より恐ろしいのは――音。部屋のスピーカーは起動していない。なのに空気そのものが、勝手にBGMを奏でていた。


明るく跳ねる、少女心全開の恋愛ループ曲。「Snoopy~ Doopy~ Love Love~❤」


メロディは毒の蠕虫みたいに耳穴へ潜り込み、脳を侵食する。リンは即座にインカムを押さえた。


「アリス、状況報告。幻術か? 敵襲か? ……誰か俺の脳に変なアプリをインストールしたのか?」


だが返ってきたのは、いつもの冷静で効率的な機械音声ではなかった。耳元に流れ込んできたのは――妙に甘ったるい、喉にスリッパでも詰めたような“ぶりっ子ボイス”。


「おはよぉ~❤ ご主人さまぁ~☆ 今日も元気いっぱいな一日だよぉ~(ハート効果音)」


「アリスがぁ~お兄ちゃんのお着替え、お手伝いしよっかぁ? ちゅっみぃ~❤」


リン:「…………」


胃が痙攣する。吐き気を殺して、リンはインカムを引きちぎり、寝室の扉を蹴り開けた。


「全員! 警戒レベル1!」「未知のミーム汚染を受けた!」


【地獄絵図:全員OOC(キャラ崩壊)】


廊下へ飛び出したリンの目に入った光景は、警察を呼びたいとか以前に――自分で目を潰したくなる類だった。


本来なら覇気全開、都市一つ焼き払っても動じない龍王バハムートが――なぜか黒いタイトスーツを着込み、ネクタイを緩く垂らし、片手を壁に突いていた。


そして、掃除中の清掃ロボットを壁際に追い詰め、堂々の“壁ドン”。


目は潤み、口元には古い恋愛小説にしか存在しない邪魅な笑み。


「女(※相手はロボットだが)、火遊びが過ぎる」「……本尊の興味を引いたな」


清掃ロボ:「ピッ……ピッ……ゴミ回収中……」


リンは無表情で龍王を避け、食堂へ突入した。すると今度は――粗野豪快、骨付き肉を豪快にかじっていたはずの暴食魔王ベルゼブブが、なぜか金髪ツインテール(???)+サイズの合わない制服スカート。


頬には不自然な赤丸。リンを見るなり、慌ててサンドイッチを背中に隠し、ぷいっと顔を逸らす。


そして、背筋が凍るツンデレ口調で叫んだ。


「ふ、ふん! み……見るなよ!」「べ、別にお前のために朝ごはん残したわけじゃねぇし!」「ば、ばかっ!」


――バンッ! リンの精神が処理落ちする前に、角から何かが飛び出してきた。


古ラ(暴食女王)がトーストを咥え、ランドセルを背負い、物理法則を無視した速度と角度で――リンの胸へ突っ込んだ。


「きゃっ! ちこく! ちこく~!」


そのまま転び、一瞬で“お約束の体勢”。背景には勝手に桜の花びらが舞い始める。


「いたたた……あっ」「これって運命の出会い……先輩?」


リンは立ち尽くし、金縁眼鏡を押し上げた。レンズに極寒の反光が走る。叫ばない。ツッコまない。


ただ、冷静に医療用スキャナーを取り出し、空間全域をフルスペクトル解析した。


「……幻術じゃない」「精神攻撃でもない」


リンの声は絶対零度だった。


「これは――【概念級ミーム汚染】だ」「誰かが宇宙の底層コードを改ざんした」「俺たちの“硬派SF”を、強制的に“乙女恋愛アニメ”へ書き換えている」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ