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第一百三十七話:大司教崩壊!「電子木魚でサイバー功徳」

(場所:廃墟聖殿・濃煙)


戦闘は終わった。


機械神教は敗北した。主機は爆ぜ、機甲は寝返り、ハッカーは発狂した。


零一は冷却液と部品の海に座り込んでいた。


頭上の脳カプセルの液は濁り、思考が崩れているのが見て取れる。


「なぜ……」


電子音が泣きそうに震える。


「我々は肉体を捨て、鋼を抱いた」


「最強の算力、完璧な論理を得た」


「なぜ科学が迷信に負ける……」


「なぜ紙(符)が機甲を止める……」


「なぜ風水で主機が爆ぜる……」


「血肉が真理だったのか」


「機械飛升は、最初から間違いだったのか……!」


零一は金属頭蓋を掻きむしり、脳を引きずり出そうとする。


信仰崩壊の痛みは、肉体の死より重い。


「哀れな子よ」


リンはため息をつき、拂塵をどこからともなく取り出し、零一の頭上を払った。


その姿は完全に“徳の高い道人”――ただし顔に“商人”の字が浮いている。


「零一」


「お前は間違っている。大間違いだ」


「科学の果ては神学ではない」


「――玄学だ」


「飛升を目指す方向は悪くない」


「だが走火入魔した」


「お前は“命”(ハード)だけ修めた」


「“性”(ソフト/魂)を修めていない」


リンはしゃがみ、零一の電子眼を覗き込む。


「算力が速くても、論理が強くても」


「お前はただの高級計算機だ」


「真の飛升は、CPUの速さじゃない」


「――功徳の厚さだ」


「殺戮が重すぎる」


「戾気が絡みついて主周波数が安定しない」


「GPUも散熱不良」


「それが業障だ」


零一が縋るように顔を上げる。


「功……功徳?」


「それはどんなデータだ?」


「APIはある? パッチは? ダウンロード?」


リン:


「不要」


「修行しろ」


リンは懐からタブレットを出した。


インストールされているのは、やたら簡素なアプリ。


画面には木魚アイコン。


「《サイバー積徳神器・電子木魚APP(深淵特供版)》だ」


「一回叩くごとに――」


「GPU算力+1」


「サイバー功徳+1」


「業障を消し、キャッシュを浄化し、アルゴリズムを最適化する」


「一億八千回叩けば、即身成仏」


「真の機械飛升だ」


零一は震える金属指で、疑いと渇望の混じったタップをする。


「チン――」


澄んだ音。


金色のピクセル文字がふわりと浮かぶ。


【功徳+1】


その一音が、零一の焦燥する論理核を貫いた。


乱れていたデータ流が奇跡みたいに静まる。


ファンノイズが落ち、警告灯が赤から穏やかな青へ変わった。


「……この感覚……」


零一は呟いた。


「矛盾がない……冗長がない……」


「ただ……静寂がある」


「これが……悟り?」


「これが……飛升の兆し……?」


零一は悟った。


完全に悟った。


その場で膝をつき、重い合金膝が床を砕く。


頭を地に叩きつけて長跪する。


「師よ!! 悟りました!!」


「私は外物ハードに執着しすぎた!」


「功徳こそ永遠!」


「弟子にしてください!」


「サイバー修仙を教えてください!」


「木魚を叩きたい! 功徳を積みたい!」


リンは慈悲(刈り取り)の笑みを浮かべた。


「善哉, 善哉」


「そこまで言うなら――教派ごとまとめて面倒を見よう」


「入門料(買収費)」


「八割引でいい」

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