第一百三十六話:機械降神?「お前のサーバー、風水が終わってる」
(場所:機械神教本部・地下三千メートル/中央処理器聖殿)
リンは“キョンシータイタン隊”を引き連れ、縄跳びみたいに最後の門を突破した。
その先は、機械神教最大の聖域――中央処理器聖殿。
塵一つない。
温度は絶対零度近くで固定。
無数の極太光ケーブルが血管のように集まり、大殿中央に巨大な正多面体結晶が浮かんでいた。
幽青の光。
点滅するたびに、億単位の演算が走る。
機械神教の“真神”――
【量子の神(Quantum God)】
無限の算力を持つ超大型主機。
ラプラスの悪魔アルゴリズムで粒子運動を計算し、未来を予測する。
零一は力場シールドの背後で震えていた。
合成音は恐怖で歪む。
「無駄だ、リン!」
「ここは量子の領域!」
「神は毎秒一億回、戦闘沙盤を回している!」
「左回避確率0%、右回避確率0%、正面突破確率0%!」
「お前らの勝率は――絶対零!」
――嗡。
量子神が轟く。
龍王バハムートが恒星を溶かす龍息を吐く。
だが炎は、当たる寸前に空間が歪み、“偶然”滑って壁を焼いた。
古ラが噛みつこうとすると、床が“偶然”崩れ、盛大に転んだ。
零一が狂ったように笑う。
「見たか! これが確率操作だ!」
「確率が0でなければ、神はそれを100にできる!」
「科学の果てで我らは神となる!」
――無解。
だがリンは刀を抜かない。術も撃たない。
ただ眯めた目で、散歩する老人みたいに主機の周りを二周した。
「……ちっ、ちっ、ちっ」
何か見てはいけないものを見たような顔で舌を鳴らす。
そして袖から、古びた風水羅盤を取り出した。
「零一よ」
「本当は言いたくなかったんだが」
リンは真剣な顔をした。
「お前の機房――風水が最悪だ」
「大凶だぞ、これ」
零一のCPUが焼けかける。
「???」
「風水? 寝言か!」
「ここは精密科学! 真理の祭壇!」
「全て最適アルゴリズムで配置済みだ!」
リン(羅盤を指して):
「アルゴリズム? アルゴリズムが天人感応を語るな」
「見ろ, この一番太い主光ファイバー」
「門に向かって真っ直ぐ突き刺さってる」
「風水的に《一矢穿心煞》」
「データが留まらず、流量が全部逃げる」
「典型的な“漏財”だ」
左上の排気口を指す。
「散熱口が西北・乾位に開いてる」
「乾は天」
「天に穴開けて西北風飲ませるのか?」
「《白虎開口》だ。血光之災。最近ボコられてるのはこれが原因」
最後に、量子神の真下――主冷却管を指し、声を上げる。
「最悪はこれ!」
「液体窒素管が地脈の“七寸”を押さえてる」
「《断龍脊》だ!」
「龍脊が折れて未来が見えるか? 見えるのは全部“詰み”だ!」
零一が混乱する。
「そ……そんな科学的根拠が……」
リンは袖を振り上げ、喝を放った。
「信じる者は救われる」
「信じぬ者は――爆ぜる!」
「古ラ! 行け!」
「その《断龍脊》を噛み千切れ! 地脈に空気を通せ!」
古ラ:
「了解! あれアイスみたいで美味そう!」
――バキン!
古神の歯で、合金管がビスケットみたいに砕けた。
氷点下二百度の液体窒素が噴き出し、全開稼働の熱いコアへ直撃する。
極熱×極冷。
物理法則(熱膨張・収縮)が、ここで降臨した。
ジジジ――――ドンッ!!!
量子神の結晶に亀裂が走り、盛大に物理爆散。
青い火花が花火のように散り、億単位のチップが炭になる。
スクリーンには最後の赤い文字列。
【警告:環境ロジック異常……玄学干渉……吉凶算出不能……大凶……】
【SYSTEM CRASH! SYSTEM CRASH!】
零一は煙を上げる“神”を見て、完全に思考停止した。
「……無数の可能性を計算した」
「微観粒子も、宏観宇宙も」
「だが……」
脳カプセルが揺れる。
「お前が“風水を見に来る”可能性だけは……計算していなかった……!」




