第一百二十六話 蜂巣意識、覚醒――「古神女王」降臨
(場所:鏡像宇宙・玉座の廃墟)
リンは薬剤販売で事態を抑えた。
だが、見落としていた一点がある。
スライムには――蜂巣意識がある。
銀河中に散った数百億のスライムたち。
その経験データは量子ネットワークを介して“源”へ回収されていく。
鏡像宇宙。
廃墟の玉座。
彼らは、ただひとつを欲した。
――「ママ」。
残留した古神エネルギーが凝集を始める。
轟――!
天地を貫く光柱が立ち上がった。
そこから現れたのは、
不可名状の肉塊ではない。
完璧な人型の少女だった。
【暴食女王・グラ(Gura)】
外見:銀の長髪、赤い瞳、鮫の牙。
黒い高分子流体で編まれたゴシックドレスを纏う。
身分:全スライムの“絶対母体”。古神進化の終点。
グラは目を開き、
子供たちが送ってきた「人類に奴隷化された記憶」を味わった。
「……誰が」
声は柔らかい。だが、星を砕く威圧が含まれていた。
「誰が私の子供たちを……掃除機とペットにした」
――ズバリ。
彼女は素手で空間を裂き、
主宇宙第13区の上空へ降臨する。
「悪い親たち……全部、食べる」
連邦艦隊は玩具同然だった。
プライムの主砲は、彼女が一口で飲み込んだ。
悲鳴の中、リンは一人、前へ出る。
武器はない。
彼の手にあるのは――
「プレミアム限定・激辛ラー条」一本だけだった。
「食う?」
リンが赤油ギトギトの棒を揺らす。
グラの滅世の気配が、ぴたりと止まる。
鼻がひくつき、口元に涎が落ちた。
「……食べたい」
リンは淡々と続けた。
「おたくの子供たちがやらかした」
「銀河の家、半分壊した」
「賠償金、だいたい三千億」
「親として――責任取るよな?」
グラは空っぽのスカートポケットを探り、
顔色を失った。
「……わ、私……お金……ない……」
リンはにっこり笑う。
「ない?」
「じゃあ肉体で払え(※労働)」
彼は一枚の契約書を取り出した。
『深淵警備グループ・終身売身契(訂正:雇用契約)』
「うち来い」
「衣食住つける」
「子供たちは戸籍も用意する」
「毎日、ラー条十トン」
「やる?」
グラは赤い棒を見て、
次に賠償書類を見た。
涙を溜め、署名した。
「うぅ……お腹いっぱいなら……それで……」
結末。
リン、最強の保育士兼、古神の最強打手を獲得。
そしてグラの初出勤。
横でうるさく喋り続けていたプライムを、
彼女が丸呑みした。
……が、リンに叱られて吐き出した。




