第一百二十四話 取扱説明書?――「誰が読むんだそんなもん」
(場所:銀河各地の家庭)
【Eco-Slime】は銀河最強のトレンドになった。
一家に一匹。誰もが飼った。
そして――
すべての災厄映画の導入部がそうであるように。
誰も、説明書を読まない。
分厚い取扱説明書の最終ページ。
ミクロン級の極小文字で、警告が書かれていた。
【高濃度の負の感情】
【純エネルギー体(例:高圧電流)】
――投与厳禁。
当然、事故は起きた。
【事故A:社畜の怒り】
第5区。上司に怒鳴られたプログラマーが帰宅し、
緑スライムに向かって叫ぶ。
「死ね上司! 死ね残業! 世界なんて滅びろ!!」
スライムが“激怒”を吸収。
瞬間、真っ黒に変色。体躯が十倍に肥大。
牙と筋肉が生え――
「グオオオオッ!」
【狂暴ゴリラスライム】へ進化し、
自宅と、隣の王さん家までまとめて解体した。
【事故B:クソガキの自爆遊び】
第9区。
クソガキが指をコンセントに突っ込み、スライムに“充電”を試みた。
「ピカピカ!」
スライムが高圧電流を吸収。
【雷電法王スライム】となり、十万ボルトを放電。
街区全域が停電し、家電が全滅した。
【事故C:プライムの悩み】
プライムの家にも一匹いた。
そしてスライムは、うっかりプライムの
『銀河連邦法典』を丸呑みした。
結果――
【揚げ足取りスライム】へ進化。
眼鏡を掛け、毎日法条文でプライムにレスバを仕掛け、
論理裁判官を完全沈黙させた。
宇宙は大混乱。
通報が殺到する。
「助けて!! うちの掃除機が変異した!!」
「耐力壁を齧ってるんですけど!?」
【幻鏡ライブ・コメント欄】
「プライムのやつ死ぬほど笑った」
「論理裁判官がスライムにレスバ負けw」
「説明書読まないとこうなる」
「リン:計画通り。これが“商機”だ」




