第一百二十二話 殺すな!――これは「金になるスライム」だ
(場所:第13区・市街)
「レベル1警報! 高危険古神幼体の侵入を確認!」
地面をぴょこぴょこ跳ね回る軟体生物を見て、プライムは即座に反物質銃を掲げた。
「執行:【全域駆除モード】。一匹残らず殲滅」
数万の機械兵が一斉に装填し、
小さな何かを蜂の巣にする準備を完了する。
「待てぇぇぇぇ!!!!!」
裂帛の絶叫が飛んだ。
リンが、守るべき我が子に飛び込む慈父――
いや、“財布”を守る守銭奴の勢いで、プライムの前に飛び出した。
そして彼は、
プライムのブーツをよじ登って埃を食っていたピンクのスライムを抱き上げ、抱きしめた。
「誰が俺の“新製品”を殺せって言った!?!?」
「……新製品?」
プライムが地面一帯を指差す。
「それは『喰らう者』の子。滅世災厄の種だ」
「災厄? 光学センサー開けてよく見ろ!」
リンはピンクのスライムを持ち上げ、プライムの顔面へ“どんっ”と突き出した。
スライムがぱちぱちと大きな目を瞬かせる。
「み?」
次の瞬間。
小さな口を開き、プライムの装甲の隙間にこびりついた古い油汚れへ――
「あむっ」
ひと噛みで丸呑みした。
食べ終えたスライムは満足そうに震え、
身体がキラキラしたピンクに変化し、
ついでにプライムのブーツを舐め上げて――鏡のように磨き上げた。
リンは勝ち誇って叫ぶ。
「見たか!? こいつは人を食わない!」
「食うのは無機ゴミ、埃、油汚れだけ!」
「怪物じゃねぇ!」
「これは――生体工学・全自動お掃除ロボだ!!」
「しかも触り心地抜群! 猫より撫でやすい!」
「そして――トイレ掃除不要!!」
周囲で銃を構えていた連邦の女性兵たちが、足元に擦り寄ってくる小さなぷにぷにに視線を落とし――
心が溶けた。
「か……可愛い……」
「長官、撃つんですか……? この子、銃身の煤まで取ってくれてるんですけど……」
プライムの論理コアが再び過負荷に陥る。
【計算:幼体殲滅コスト=50億星貨】
【計算:幼体による都市廃棄物処理=利益∞】
【結論:……反論不能】
【幻鏡ライブ・コメント欄】
「プライム:くっ……こいつ正しい……」
「リンの口、死人も蘇らせるレベル」
「怪獣を家電に変換する男」
「欲しい。めっちゃ揉みたい」




