第一百二十一話 無限リロード?――いいや、これは「分娩前の陣痛」
(場所:位面転送ゲート・第13区)
世界が巻き戻る。光と影が組み替わる。
リンは、またしてもゴミ山の上に立っていた。
頭上で、論理裁判官〈プライム〉の冷たい声が――N回目の宣告を響かせる。
「リン! 高危険位面への無断接続を検知! 執行:強制解体――」
「……止まれ」
リンは今回は電卓を取り出さない。
そのまま片手を上げて、プライムの“詠唱バー”をぶった切った。
背後の転送ゲートを、険しい顔で睨む。
「プライム、黙れ。うるさい。……こいつの邪魔をするな」
プライムが固まった。
論理コアが再び“カクつく”。
「……こいつ、とは……誰を指す?」
「ゼロたん、解析できたか?」
リンは精神チャンネルで問いかける。
〈ゼロ(エコ版)〉の瞳が、緑色のデータストリームで明滅する。
「この時間逆行は敵意ある攻撃ではありません。周波数が非常に規則的です」
「三分おきに一回。大規模な空間収縮を伴っています」
ゼロは断言した。
「確認しました。この波形――生体の高強度筋痙攣と一致」
「宿主。『喰らう者』は時間を食べていません」
「……食べすぎてエネルギー過負荷です」
「概念級の“子宮収縮”が発生しています」
「……は?」
リンの口の棒付きキャンディが落ちた。
「宮縮? って、お前……」
「まさかコイツ、産むのか……?」
その瞬間。
ゲートの向こう側の震動が、限界まで達した。
「げぇぇぇぇぇぇぇぇ――――ッ!!!」
次元を砕きかねない、巨大な“満腹ゲップ”が天を裂いた。
時間ループの結界が――一瞬で粉砕される。
続いて、過剰な「高エネルギーゴミ」を消化し切れなかった古神本体が、眩い虹色の閃光と共に――
爆裂した。
破壊ではない。
それは【超数分裂】だった。
ざあああ――
空から雨が降る。
水ではない。
拳ほどの大きさの、ふにゃふにゃの、カラフルなゼリー状生命体が――億単位で。
それらは雹のように連邦艦隊のシールドを叩き、
第13区の道路を跳ね、
そして――プライムの頭頂部にまで落ちた。
【幻鏡ライブ・コメント欄】
「??? 古神、爆発した?」
「爆発じゃねぇ! 出産だこれ!!」
「うわ、地面全部コレ! ……スライムじゃね?」
「リンだけ『産んだ』に反応してるの笑う。助産師デビューが急すぎる」




