第一百一十六話 食い切れない?――“ゴミ処理機”の真実
(場所:王座テラス・宴会会場)
十分後。
滅世の惨劇は、狂気の“屋外BBQパーティー”になっていた。
黒林恩は感動で泣きながら食い続ける。
「う、うまい……真にうまい……」
「俺は数年、何を怖がってたんだ……」
「この一口のためなら魂でも売る……!」
龍王とサマエルは、最後の“炭火焼き触手の先端”を奪い合い、既に殴り合い寸前。
――だが問題があった。
空の裂け目はさらに広がり、流れ込む触手は無限。
紫の海みたいに押し寄せてくる。
「無理だ、林恩!!」
ベルゼブブが大の字で転がり、腹を丸くして白目を剥く。
「多すぎ……食い切れねぇ……!」
「これ以上は詰む! 暴食権能がオーバーロードだ!!」
林恩は口元を拭き、蠢く触手の海を見て眉を寄せた。
「確かに……“食って救う”は効率が悪い」
「胃袋には上限がある」
「だがエントロピー増大は無限だ」
その時――
極めて些細な挙動が、林恩の目を刺した。
調味料の奪い合いに負けた一本の触手が、
こちらを諦め、隣の廃棄核反応炉に巻き付いたのだ。
それは黒林恩が作った“終末兵器”の残骸。
高濃度放射線と猛毒重金属廃棄物の塊。
炭素生命なら近づくだけで溶ける。
だが触手は反応炉を巻き上げ、
タピオカミルクティーでも飲むみたいに――
「ごくん」
毒燃料を吸い干した。
食べ終えると、触手は中毒どころか、
うっとりするようなピンクの光を放ち、皮膚が艶々に。
最後に“げふっ”とゲップして――
透明で純粋な結晶を吐き出した。
「……ん?」
林恩の瞳孔が揺れた。
片眼鏡をかけ、全域スペクトル解析。
【解析結果:放射性廃棄物を100%純粋エネルギーへ変換】
【変換率:100%】
【排出物:クリーンエネルギー結晶(無公害)】
【副作用:なし】
「……ぱた」
林恩の箸が床に落ちた。
彼は跳ね起き、骨を齧っている黒林恩の襟首を掴み、狂ったように揺さぶった。
「食うな!! 食うな!! このバカ!!」
「お前、何してんだ!!」
黒林恩はきょとん。
「え? 不味いのか?」
「違う!!」
林恩は触手を指差し、声が震えた。
それは“金鉱”を見つけた震えだ。
「これは食材じゃない!!」
「宇宙最高効率・最強環境性能・しかも無料の――」
「“ゴミ処理機”だ!!」
「連邦が核廃棄物1トン処理するのにいくらか知ってるか?」
「十億だ!!しかも漏洩リスクと一生付き合う!」
「それがこいつらは……」
「ゴミを与えるだけで生きる! しかもエネルギーを産む!!」
「天災じゃない!!」
「俺の“揺れる金のなる木”だ!!」
「俺の“印刷機”だ!!」
【幻鏡ライブ・コメント欄】
[ うわ, 目が変わった!“料理人”から“商人”になった! ]
[ 古神:滅世の天災だ! 林恩:いや、お前は全自動焼却炉だ。 ]
[ 資本家が泣くレベルの搾取発想。 ]
[ クトゥルフを豚として飼うとか誰が思うんだよ……林恩だけだよ…… ]




